教育福島0051号(1980年(S55)06月)-014page
子供たちは、「自分はいかにあるべきか」「どんな点に努力しなければならないか」を考えるようになってくる。しかし、現実には友達や雰囲気に左右されて自分を見失い、衝動的な行動に出たり、自己中心に考えて権利ばかり主張したり、反社会的な行為に走ってしまうなどの例が多い。そして子供は幾度か失敗し、つまづき、いきづまりながらも、よりよく生きたいとの願いを持ち、価値ある人間としての生き方を求めているものである。
これにこたえるために、基本的に次のようなことに留意して援助していくことが必要である。
・ 子供一人一人に自分の生きる目標を明確化させていく。
子供の中には、自分の生きる目標をばく然ととらえている者もいるが、たしかな自己理解に基づいた自己目標を立てて生活している者は少ない。
子供が、より価値ある人間として生きていく力を育てるためには、自己を深くみつめ、みんなのためにどう生きていくかをほりさげながら、学校の教育目標をよりどころにして、子供に応じて生きる目標を明確化していくことが必要である。自己目標を立てる場合、特に次の点に留意することが必要であろう。
・ 子供に適合したものであること
・ 具体的であること
・ 内容が焦点化されていること
・ 達成可能なものであること
以上の要件をおさえ、一人一人の子供に自己目標の必要感を高めながら目標設定の手順下方法を理解させそれぞれの子供に適合した目標を自ら立てていくように援助・指導していくことが必要である。また、この目標を固定化せず、たえず実践しながらたしかめ、修正を加えながらより質の高い目標に改善していくことが必要であろう。
次に学級目標との関係であるが、子供一人一人の目標実現のため、学級づくりをしていく共通の目標という性格でとらえ、子供の自己目標に支えられた学級目標を設定することが必要である。
・ 目標の実現をめざし、自己指導を行っていく力を育てる。
目標が明確化されたら、目標実現のために専心努力する力を育てなければならない。いうまでもなく、目標は順調に達成されるものではなく、途中でざ折感を感じたり、不安感を抱いたり逃避したり、あきらめたりしながら歩み続けることになるからである。
このような人間の弱さや不安を常に良心をゆさぶりながらコントロールし、自分をふるいたたせ、自己概念を修正しながら、進む方向を決定し推進していく心的なはたらきが自己指導であると考える。
このような自己指導を助成していくためには、目標との関連において自己の現状を厳しくみつめ、自己理解を深めること、良心にてらして欲望を自己制御することを指導することが大切である。
また自分が、どのように対処していったらよいかを教師や両親、友人などと十分話し合い、決定していくことなどの心的働きをねり上げていくとともに、目標との距離を一歩一歩縮めていく強い意志力をきたえていくことが大切である。
このような自己指導をよりたしかなものにしていくためには、道徳の時間学級指導等の時間を通して正しい価値観を育てるとともに、努力の過程において模索しながら適切な行動をとったことに対して、チャンスをとらえて称賛し、更に質の高い打開の方法について助言してやることや、つまづきに対する支援のことばをかけてやることなど、子供に即した適切な援助が必要である。
4 子供一人一人の自己実現を図る援助態勢を確立する
自己理解-自己目標の確立-自己指導の過程を述べてきたが、生徒指導の究極のねらいは、自己実現を図ることである。自己実現とは、自分のなすべきことを明らかにとらえ、自分の能力等を最高限度に発揮し、成就感、満足感、充実感等を味わいながら自己を生き生きと表現していくことであると考えられる。子供一人一人をこのような姿に育てていくためには、基本的に次のような点に留意して援助していく必要がある。
・ 子供の立場に立った生徒指導の課題を的確にとらえ、一人一人を生かす組織・運営を工夫する。
各学校では、生徒指導の全体計画、部門別計画がととのえられ、組織を生かした実践がなされているが、ともすると固定化、形式化されがちである。
子供一人一人の自己実現を図るためには、子供一人一人の心の内面に目を向け、その実態と問題点を的確にとらえ、自校の課題を明確にしていくとともに、子供の基本的欲求を重視し、それを質的に高めていく創意を生かした計画及び組織・運営を工夫していくことが必要である。
【計画について】
・ 子供も一人一人の課題意識に支えられた計画を立てる。
・ 重複を避け、援助・指導の重点および相互関連を明確にした部門別計画を立てる。
・ 教科、道徳、特別活動やその他の活動における生徒指導の内容を明確におさえた計画を立てる。
・ 子供の課題意識や行動の変化を敏感にとらえ、絶えず計画内容をたしかめ改善していく。
【組織・運営について】
・ 教師自身が子供の情感を大切にしながら、共感的な態度で援助する。
・ 子供一人一人の自図実現を図るため、教職員のそれぞれの役割を