教育福島0051号(1980年(S55)06月)-016page
1 各教科指導と生徒指導
子供たちの学校生活の中で、最も大きく位置づけられているのは教科学習である。そこには教師と子供、子供たち相互の人間的なふれ合いもあれば、グループ活動を通して互いにみがき合い、はげまし合って理解を深めていく機会もある。しかし教科指導はともすると教科の基礎的・基本的な内容や学習のしかたを一方的に習得させることに力点がおかれ、教科の学習を通して子供一人一人の自己実現を図るための援助.指導が不十分になる場合がおこる。
したがって、次のような点に留意して教科指導と生徒指導の一本化を図っていくことが必要である。
・ 教科学習に取り組む自己目標を明確にする。
・ 教科学習を自ら計画、実行、反省できる力を育てる。
・ 教科学習における共通課題、自己課題を明確にし、見通しを持って学習に取り組めるよう援助する。
・ つまづきに気づき、自ら克服していく力を育てる。
・ みがき合い、ひびき合う学習を進める中で自己発見に努め、互いにみがき合い、個人としてさらに学級全体として、成就感、達成感が味わえるようにする。
・ 自己評価、相互評価を通して、目標達成の度合いをたしかめさせ、学習の進め方、学習への取り組み方について厳しく反省を加え、更に自己を高めるよう努める態度を育てる。
2 道徳と生徒指導
道徳の授業は、子供の価値観の形成を直接のねらいとしているのに対し生徒指導では子供一人一人具体的な日常生活の問題を手がかりとして自己実現を図ることをねらいとしている。道徳の授業と生徒指導の関連について次の点に配慮する必要がある。
・ 問題場面に直面させ、「自分にとって何が問題であるか」を考え、自己課題の意識を高める。
・ 日々の生活をふり返り、互いに本音を出しあいながら自己をみつめさせる。
・ 価値かっとうを通して正しい価値判断の力をねりきたえる。
・ 主題の価値追求を通して自分の進む方向を自らとらえ、自己指導を強化しながら生きていく力を高める。
3 特別活動と生徒指導
特別活動のねらいは、集団活動を通して自主的・実践的な態度を育てることである。
これを生徒指導の見地から考えると次のような具体的なねらいが含まれる。
・ 集団生活の中で、それを構成する個々の成員のそれぞれの特性や個性が生かされ、人格が尊重されるような生き方を学が。
・ 集団の役員の連帯意識を高め、集団の一員として、ひいては社会人としてふさわしい態度や生き方を学が。
このように、特別活動は生徒指導上価値ある活動目的・内容をもつものであるから、活動の展開に当たっては次の点に留意する必要がある。
・ より高まりたい、みんなから承認されたいという欲求を充足しながら自ら課題をとらえ、解決していく力を育てる。
・ 集団活動の中で機会をとらえ、自分や他人をみつめ、自己理解、相互理解を深めるよう援助する。
・ 自己指導を強化しながら、失敗やつまずきを克服するよう援助する。
集団で楽しく(石川中)
生徒理解のために
白河市立白河中央中学校教諭
遠藤毅
一 生徒理解の考え方
現在、中学校における生徒指導上の諸問題は、生徒理解が不十分なところに原因があるといわれている。それは教師の多くが、自分の担当する教科教育には熱心であるが生徒理解の方法や技術を身につけ、それを実践しようとする意欲に欠けているからである。
正しい生徒指導は、正しい生徒理解から始まる。生徒一人一人を人間として尊重し、それぞれの特徴や傾向をよく理解し、把握し、生徒自身が望ましい方向に成長しようとする生徒自身の自己理解を助けることができれば、自ら望ましい方向に成長していくのではなかろうか。
1 生徒理解の必要性
(1) 個人理解の必要性
1) 一人一人の個性を理解する
生徒は、一人一人の顔や形が異るように、個性的であり、それぞれ独自の特徴を持ち一人として同じものはいない。すべての人格は、その個性のうえになりたっている。一人一人の人格を望ましい方向に形成させようとするとき、それぞれの個性を生かし、個人の持つ特徴に従って指導しなければならず、生徒理解が必要になってくる。