教育福島0051号(1980年(S55)06月)-017page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

2) 一人一人の問題を理解する

生徒の生活への意欲を高め、不適応条件を除去し、充実した生活を送らせるために

・ 一人一人の興味・要求・悩みなどの問題を把握する。

・ 生徒がこれらをどう表現しているかを把握する。

・ 生徒をとりまく人間環境はどうかを理解する。

これらの問題ほどのようにしておこったかを診断し、それに従って治療的な指導を進めなければならない。

(2) 集団理解の必要性

生徒指導の実際の場面では、集団場面が少なくないので、集団をよく理解することが大切である。この場合、集団を理解するためにも、集団を構成している生徒個人を理解することと、集団の構造や性格そのものを理解することが必要である。

同じ個人でも、所属する集団によって立場や役割も変わり、個性の現れ方も変わってくるので、集団理解も生徒理解の大切な一面である。

 

集団理解の場と機会(宿泊訓練)

 

集団理解の場と機会(宿泊訓練)

 

2 生徒理解の内容

生徒の個性とか、人格とかいわれるものは、きわめて複雑な構成を持ち、現れ方も多様である。生徒を理解するうえで、それらのことをできるだけ多面的に、かつ正確に把握することが重要であるが、特に重要と思われるものに、能力の問題、性格的特徴、興味、要求、悩みの問題、交友関係、環境条件などがある。

(1) 能力の問題

能力の問題には、身体的能力、知能学力などがある。これらの学校生活への適応を規定する基本条件である。知能、学力などの知的能力については、生徒指導を行う者がまずもって把握しなければならない重要な側面である。

・ 知能の程度が明らかとなれば、その生徒に期待しえる学業の程度も明らかとなり、進路指導の資料にもなる。また、学業不適応から起る問題や行動を理解し、予見することができる。

・ 知能と学力の関連をみることによって、学業不振の要因を探索する手がかりが得られる。

(2) 性格の問題

性格の傾向を知ることにより、生徒指導の方法を示唆してくれるとともにさまざまな問題の診断にも役だつ。性格によって、禁止や処罰が有効なこともあるし、激励が必要なこともある。問題にしても、ある程度まで、非行に走りやすい性格、ノイローゼになりやすい性格などが考えられ、予防指導がある程度まで可能である。

(3) 興味・要求・悩みの問題

生徒の興味や要求や悩みなどは、生徒の生活や問題に直接関連する。生徒がそれぞれどんな興味を持ち、どんな要求をもち、またどんな悩みを持つかを知ることは、行動の理解のうえからも、指導のしかたのうえからも重要である。

(4) 交友関係の問題

交友関係についても、どのような友人とどんな交際をしているのか、あるいは、学校や学級の中でどのような位置にいるかを知ることも大切である。集団を利用して指導するような場合、集団そのもののあり方を把握することが必要である。特に学年による差を考えて異性との交友指導を行う必要がある。

(5) 環境の問題

環境の問題としては、家庭環境の理解が大切である。物理的客観的条件だけではなく、家庭の人間関係や家族の雰囲気などの心理的条件も重要である。次に近隣社会の状況、校外で所属するグループの様子などについて知ることも、生徒理解の一面である。

 

生徒理解は、どこまでも、生徒一人一人の人格を望ましい方向に形成させるために役だつものでなければならない。生徒理解においても、まず、その理解が科学的で、正確でなければならない。いろいろな面について、可能なかぎり客観的な資料を得るためには、科学的な目を持って観察し、科学的、専門的な方法や用具によって集めることが大切である。

生徒理解は、個々の生徒の伸長のために意味があるので、教師個人が理解してもそれが対象である生徒に生かさなければ、生徒理解は十分なものとはいえない。

注意しなければならないことは、

・ 教師が理解した内容について、一方的に教師が生徒におしつけるのではなく、理解した内容を、生徒にも納得させること。

・ 教師が生徒について理解したことを、生徒自身の自己理解に役だたせるようにすること。

・ 生徒理解のための生徒理解にならないようにすること。

・ 誤った理解や独善的な理解にならないようにすること。

指導に役だてるためには、得られた

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。