教育福島0051号(1980年(S55)06月)-018page

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資料をいかに記録し、それを理解するか、また、あとで利用しやすい形に整理し、保存することが必要である。

得られた資料をどう解釈するかにより、指導が大きく変わるので注意しなければならない。

 

二 生徒の自己理解を高める方法

1 生徒理解の基本的資料

生徒を理解するための資料として考えられるものには、非常に多くのものがある。例えば「生徒指導の手びき」(文部省・義務教育課発刊)には、次のようなものがあげられている。

(1)一般的な資料

生徒の氏名、住所、その他の資料

これは、生徒指導要録に記載されている程度のもの

(2)生育歴についての資料

ア、妊娠中における母親の状態 イ、出産時の状況 ウ、乳児期における栄養や病気 工、乳児および幼児期におけるしつけ オ、歩行開始や始語の時期など

(3)家庭環境についての資料

ア、家系、特に精神障害者の有無など イ、家庭の社会的、経済的状況、特に家族の職業、学歴、収入など ウ、家族の生活態度、いわゆる円満な家庭かどうか 工、家庭の教育的関心 オ、両親関係、和合的かどうか 力、本人に対する親の態度、理解的、合理的、民主的、溺愛的、過保護的、強制的、拒否的など キ、家族間での本人の地位、一人子、長子、末子など、あるいは無視されている。偏愛されている ク、両親のしつけの、態度、厳格、不公平、感情的など ケ、兄弟姉妹関係 コ、同居人、祖父母などと本人の関係 サ、家庭に対する本人の態度など

(4)情緒的な問題についての資料

ア、過敏性、幼い時に泣き虫であったか、おこりっぽいほうであったか、それを両親はどのように扱ったかなど イ、爆発性、いわゆるかんしゃくもちであるかなど ウ、精神的な打撃を受けた経験の有無やその内容 工、不安、反抗などの経験の有無など

(5)習癖についての資料

ア、食事についての特異な傾向 イ、睡眠の習慣や特異傾向 ウ、性についての特異な習癖など 工、神経症的習癖、例えば、しかめっつら、顔面けいれん、つめをかむなど オ、排便、排尿についての習慣や便泌、消化不良の有無など 力、言語の異常や早口、無目など キ、攻撃的、反社会的行動の記録など

(6)友人関係についての資料

ア、友人関係の推移や現状 イ、交友関係についての本人の特徴、わがままいじわる、独占的、付和雷同的など ウ、問題グループとの関係など

(7)身体の健康状況などの資料

ア、病歴、病弱かどうかなど イ、身長、体重、栄養などの推移と特徴 ウ、精神的な問題の有無、消化不良、頭痛アレルギー、ぜんそくなど エ、女子の生理の状況など

(8)学校生活についての資料

ア、教育歴、幼稚園や小学校から現在にいたるまで イ、学業成績、教科の好ききらい得手、不得手、学校や家庭での学習の習慣など ウ、出席状況不規則な欠席、長期欠席、ずる休みなど 工、学校生活への適応、教師や友人との関係、集団内での役割、および退学、停学、訓告などの記録など

(9)検査や調査の結果の資料

ア、知能について イ、学力について ウ、知能と学力との関係について 工、性格、適性などについて オ、悩みや問題行動などについて 力、興味、趣味などについて キ、将来の希望および進路など

(10)現在当面している困難点

ア、身体的困難 イ、家庭関係、家庭問題など ウ、学校生活、学業上の問題、学校における人間関係など エ、学校内外の交友関係 オ、進路問題など

ここにあげられた項目は生徒理解のために必要な資料であることはそのとおりであるが、実際にこれらを学校の現場で収集し、その結果を活用しようと思うとき、この資料のすべてを一挙に獲得することは困難である。また、収集された生徒理解の資料は、保管を厳重にし、必要に応じて十分活用できるようにするとともに、秘密保持には十分な配慮が必要である。

 

2 生徒理解のための計画

生徒をより正しく理解するということは、学校教育を適切に行う前提条件であり、教科・道徳・特別活動の指導も、生徒理解の深まりや広がりなくして、効果を期待することはできない。

生徒指導が生徒理解のうえにたって行わなければならないとすれば、生徒指導の全体計画の実施に当たっては、生徒理解を正しく行うための計画が同時にそなえられなければならない。

生徒理解の年間計画を作成し、展開する場合、最も配慮すべきことは、指導とのかかわりあいのある年間計画を作成することである。

そこで、第一に、生徒理解と生徒指導を結合するための組織づくりをすることが必要になる。

第二に、生徒理解の年間計画を作成する場合、留意することは、各学年の重点を決定することである。

第三は、学年重点とともにそれぞれの学年の各学期の重点と内容を決定する。

生徒理解のための年間計画の一例を示すと別表のようになる。

(本校の計画表をもとに作成)

<指導との関連>

指導との関連を明らかにするために月別計画の中に学級担任がどのように指導したらよいか。例えば、四月に行う各種の調査・検査と並行して、担任は四〜五名ずつの生徒と集団面接を行

 

 

 


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