教育福島0051号(1980年(S55)06月)-021page
成長することを願う教師として、これらの態度をふまえて実践に努めたいものである。
一 問題行動の考え方
問題行動とはあいまいな概念である。強いて定義すれば何らかの観点から問題視される行動とでもいうほかはない。生徒指導の観点からは、生徒の発達にとって問題とすべき行動を「問題行動」としてとらえるのが妥当であろう。
問題児とか、問題生徒とかいうと、一般的にはすぐ行動が粗暴で、学習成績が悪く、規則を守らなかったり、教師や親に反抗したりする生徒を考えがちであるが、このようにせまくとらえると、そうした生徒のいない場合は極端な例で「うちのクラスには問題行動生徒がいないから生徒指導の必要はない」ということになる。
しかし、学校生活において、親しい友人も持たず、学級での話し合いでもまったくといってよいくらい発言せず、共同作業でも自分の仕事だけはやるが、積極的に他と協力しようとしないような内気な生徒については、その生徒が学習成績がそれなど悪くないとか、粗暴な行動がないという場合には、教師も親も問題を持つ生徒として意識しない場合が少なくない。このような生徒が将来社会生活における脱落者となることも少なくないにもかかわらず、教師や親は問題生徒として注目しない場合がしばしばみられる。
これに比べて青年期の活力あふれた生徒が学校のきまりを多少乱すようなことがあると、すぐ問題生徒とされやすい傾向にも注意を要する。そのような生徒が逆にしばしば社会に出て積極的な活動をして有為の青年となっていたようなことも少なくない。
問題行動とは特定の生徒だけのものではなく、すべての生徒がなんらかの意味で問題をもっていると考えるべきであろう。
二 問題行動の早期発見
問題行動の早期発見は、その重大化、重症化を未然に防止し、早期に指導することにより、手遅れをなくすということである。調査や検査も大いに利用しなければならないが、担任教師として最も基本的な態度として必要なことは生徒理解に徹することであろう。毎日可能な限り、あらゆる場面で一人一人の生徒に接し、一人一人を正しく理解していく中で生徒の成長、発達の陰にある問題行動の芽、背後にある原因を見つけ出すことができるからである。
(一)内面的な理解
人の行動を決定づけるのは心の動きであり,、感情的側面であるといわれる。外に現れた行動は同じに見えても、その内面は徴妙に違っている場合が多いので、現象だけを見ても正しい理解には結びつきにくい。生徒の内面の動きをありのままに感じとることができれば、早期発見や指導の有力な手掛かりがつかめるのではないだろうか。内面的な理解に迫るための方法として、
1)話し合いの機会を通して
心の動きを理解するもっとも直接的な方法は、個人またはグループによる話し合いである。形式ばったものや、知的なレベルに終わるものであってはならない。そのためには、生徒の話を熱心に傾聴しどんな内容であっても批判や指導を焦らず、その心情をありのままに理解しようとする姿勢が前提条件となろう。なんとか時間をねん出し、できるだけ全員と話し合うように計画したいものである。また、諸活動や放課後等の時間を利用して、だれとでも自由に雑談したり、グループでの話し合いの機会をもったりするなどの工夫をしていきたいものである。
2)日記、作文、手紙、グループノート等を通して
人間は心をゆさぶられる経験や悩みを持つとだれかにつたえたい、受けとめてほしいと願うのは多くの人の共通した傾向ではないだろうか。その場合面接では思いのままに表現できなかったりすることもある。そこで作文や日記、手紙の交換等によって率直に気持ちを表明し合い、理解し合うように工夫することにより、個人の理解はもちろん本人ばかりでなく本人に関係の深い生徒の早期発見につながる場合が多い。
3)行動をともにすることを通して
生徒と作業や運動やその他様々な活動をともにすることによって、その心の動きを感じとり深い人間関係を持つように工夫することが問題の早期発見や指導につながる。その際大切なことは運動や作業などの方法、技能の指導に重点をおき指示や規制が多くなって自由な雰囲気が損なわれることがないようにすることである。むしろ生徒の主体的な活動の中で教師もその一員として参加するときに気持ちが開放され通じ合える。特に問題を感じた生徒については、それとなく接触の機会をつくりその内面の動きを感じとるように配慮したい。
(2)観察を通しての理解
日常の教育活動の中で、生徒の観察は意図的であるといなとにかかわらずたえず行われている。そうした観察を通して生徒の微妙な変化を鋭敏に感じとり早期発見に結びつけることが大切である。そのためにはできるだけ観察記録をとることを習慣づけたい。そして一定期間内に全員の観察ができるよう観察の機会やポイント、記録の方法等について工夫する必要があろう。
(3)諸検査による理解
検査には、知能検査、学力検査、向性検査、適応性診断検査などのほか、投影法といわれるロールシャッハ検査など多種多様な検査が考案されてい