教育福島0051号(1980年(S55)06月)-022page

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る。生徒理解のため、観察、面接を補い信頼のおける科学的、客観的な資料を得る方法として実施し、そこから何らかの問題の早期発見の手掛りが得られよう。しかし検査はあくまでも生徒のある面を測定するものであり全体像を浮きばりにしているものではないということを念頭において一つの検査結果を絶対的なものとして過信することのないように、その方法や解釈の仕方、限界などをふまえて、他の資料と統合して生かすようにしたい。調査としては家庭環境調査、生育歴の調査、趣味興味の調査、交友関係の調査、悩みの調査などが重要なものである。これらの調査から家庭生活、学校生活、対人関係等の問題悩み、つまずきなどを角度をかえて生徒に対するアンケート形式で聞き出すのも一つの方法である。また同一の項目について何回かくりかえしたずねるのも生徒の変容を知る手掛かりになる。

(4)情報交換を密にする

校内の協力を得られるようにすることも大切である。各教科の授業での場面、クラブ活動、部活動、生徒会活動の態度から様々な問題発見の手掛かりを得られることが多い。各担当教師から諸情報の連絡が得られるように学級担任のほうから積極的に依頼するとよい。学級担任が胸襟を開いて周囲の教師と交流を深め、生徒指導上の協力が得られるようにするならば、学級の生徒のために大きなプラスである。なお養護教諭などが、担任の知らない意外な情報を提供してくれることがぁるので進んで連絡をとるようにすることも早期発見につながる。

(5)家庭との連絡

生徒の家庭における行動の変化や不審な言動があれば速やかに学校に連絡してもらうとともに、学校における変化についても、緊密な連携のもとに問題行動の早期発見に努める。この場合生徒の問題点を指摘して家庭の責任を問う一方的な姿勢では協力は得にくい。どのような場合にも生徒の将来のために連絡し協力し合うという学校側の肯定的な姿勢を示すことが連絡を密にする前提となろう。

(6)関係機関との連携

主として生徒指導主任が、隣接する学校、塾、児童相談所、家庭裁判所、警察、民生委員、少年センター、デパート、スーパー、図書館等と積極的に連絡をとることによって、それぞれの場における生徒の情報を得ておくことが早期発見の手掛かりにもなるので、日ごろからそれらの担当者との人間関係を深めておくことが大切である。

問題行動や問題生徒の早期発見において特効薬はないといわれる。結局生徒理解を着実に進めることが大切であろう。授業時はもちろん休憩時間、給食時、清掃時、あるいはクラブ活動、学校行事など教師があらゆる場面で、一人一人の生徒に目をそそぎ心をくばること、これが問題発見のポイントであろう。しかしこれは生徒の秘密をさぐったり、欠陥を見つけたりするような監視の目であってはならない。好意ある目、共感をこめた目、どんな生徒でも受け容れてやれる目でなければならない。そうでなければ微妙な生徒の心の変化を自然にみつめることはできないであろう。日常生活をともにじ、信頼関係を深め生徒理解に徹する日常の努力が大切であると思われる。

 

三 対策と指導のあり方

生徒の問題は多種多様でありその原因もさまざまである。したがって問題生徒の指導もその問題や原因に応じて進められなければならない。いわゆる問題生徒のための特別な指導というものが生徒指導とは別にあると考えてはならないであろう。原則的にいえば、生徒指導を着実に進めることが問題生徒の指導であるといっても過言ではないと思われる。

中学校においては学級担任の存在は生徒の大きな心の支えであろう。問題行動の予防や積極的な健全育成のためには、学級担任は一人一人の生徒を正しく理解し親和的で信頼し合える人間関係を持つことが大切である。そのような信頼関係の中で生徒は自己をありのままに見つめ自ら立ち直ることができるのではないだろうか。その意味で「理解即指導」ということがいえるのではないだろうか。

(1)問題行動の予防

問題生徒が出てしまってからうろたえるのではなく、問題生徒を出さないようにより多く予防に力を注ぐことが大切である。指導にあたる教師の何分の一かの時間と労力で効果をあげることができる。そのためには日ごろから絶えずどの生徒にも温かい手をさしのべることが問題行動発生の予防の基本であると思われる。以下学校、家庭、地域でのあり方について考えてみる。

1)生徒との心の交流を深める

学級担任としてクラスの一人一人と心の交流ができていれば、そこからは問題行動の生まれる余地はないであろう。生徒一人一人について、彼が何を考え、何を感じているか、彼がいま何を一番問題にしているかというようなことを考えるとともに、彼にどんなすぐれているものがかくされているかを知ろうと努めることが必要であろう。

2)充実した学習活動が展開できるようにする

問題行動の多くは学習に対する劣等感やざ折感に起因していることが多い。生徒にとってわかる授業とはどういう授業なのかを考え教師自身が常に改善向上に努めることが生徒を授業にひきつける要因ともなり問題行動に走ることを予防することにもなるものと思われる。

3)望ましい集団活動のあり方を指導する

 

 

 


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