教育福島0051号(1980年(S55)06月)-023page

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特に問題傾向を持つ生徒に対しては、学級の係活動やクラブ活動、部活動等で役割を与えて活動させ自信を持たせ、学校生活に明るさとリズムを持たせることが問題行動を防止する力となろう。

4)明るい活気のある空気をかもし出す学級経営に努める

学級は学習集団としての性格と生活集団としての性格を同時に持っている。そして学校における生徒の人格形成ないし成長発達は、その大部分がこの学級を場とする生活の中で行われる。したがって学級が一人一人の生徒にとって健康的で明るく楽しい生活がおくれる学級。民主的で何でも話し合える学級。相互に励まし合い、助け合える学級。展望を持ち、何事にも意欲的に取り組める学級。そこには問題行動発生の余地はないと思われる。その雰囲気づくりをすることは学級担任教師の重要な仕事でもある。

5)学級やグループの人間関係を育てる

学級は学校における家庭であるといわれるが、担任教師はその親として愛情と公平を原則として生徒に接していくことが大切である。一人一人の生徒についての理解を深め、教師と生徒及び生徒相互がうちとけた中で親密な人間関係を結び、よろこびも悲しみもわかち合えるような人間関係を醸成する必要がある。このような人間関係が醸成されれば問題行動を自然に抑止する力となると思われる。

6)豊かな人間性を育てるための学校づくりによって生徒に生きがいを育てる

学校は生徒にとって、生きがいを育てるところでなければならない。そのために、これからの学校は、ゆとりある充実した学校生活を創意工夫し、楽しく豊かな学校にすることが問われる。

7)将来への見通しを持たせる

自分の将来に向かっての夢を持っていることは非常に生徒たちの励みになると思われる。この将来に向かっての夢を実現させる道を切り開く力を与えていく指導が十分に進められるならば、問題行動に走るおそれは全くないとも考えられる。

8)保護者に対してあらゆる機会を通して家庭教育のあり方について理解と協力を求め実践にうつすことは問題行動の予防につながるであろう。

9)地域の協力

問題行動の発生については、環境の及ぼす影響を見のがすことはできない。しかし環境条件を規制したり改善したりすることが困難な場合も少なくないので学校、PTA、地域の諸機関、諸団体および近隣住民が協力しあってねばり強い活動をすることが問題行動の防止につながる。

(2)指導上の留意点

教育とは、生徒を「教え、育てる」ことである。問題をおこした生徒を追求し、処罰するというのではなく、反省させて立ちなおらせるための指導でなくてはならない。したがって生徒にとって一番身近な存在であり指導の中心となる学級担任は、その問題の内容をしっかり把握して事後処理を誤らないように、また今後の指導のあり方を考えながら指導する必要がある。

1)問題生徒に接する教師の温かな態度

2) 教育相談的な配慮をすること

3)他の教師などとの協力

4)組織的、継続的な個別指導の展開

5)学級の人間関係を通しての指導

6)希望を持たせる指導

などである。

人は他人からどう見られているかによって行動を変えるものである。生徒は親や教師や友人から温かい目で見られているか、冷たい目や憎しみの目で見られているかということに極めて敏感である。例えば、問題や欠点だけを指摘する者に否定的になり、反抗や逃避という形で対応するものであり、長所や努力を大切にしてくれる人に対しては、肯定的で意欲的な態度で応ずることが多いといえる。

たとえ、どのような問題を持つ生徒であっても、なんらかの可能性があるはずである。決して見捨てない指導のあり方が大切であろう。

 

おわりに

問題行動の指導のあり方について考える場合、特効薬的なものはない。

一人一人の生徒を正しく理解しようとする姿勢で、生徒と教師の人間的なふれ合いを基盤とする指導への熱意がそのまま指導につながるのではないだろうか。これからの実践の場を通して、その答えを追求する努力をしていきたいと思う。

 

握手でコンニチワ

 

握手でコンニチワ

 

 

 


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