教育福島0051号(1980年(S55)06月)-038page
教育センターから
昭和54年度の
教育相談をかえりみて
一、教育相談の実施状況
(一)相談延べ件数千百九十八件
昭和五十四年度中に、当センターを訪れた相談者は二百六十人にのぼる。その中で幼、小、中、高校生の来談者は、年々増大する傾向にあり、相談業務が軌道にのりはじめた六年前の二・五倍にのぼっている。
相談延べ件数からみても本年度は千百九十八件(表1)を記録し、前年度延べ件数九百六十五件を大幅に上回っている。これは、昭和四十六年度に当センターが相談業務を開始して以来、最高の記録である。
このように増大している背景には、相談部の業務内容が、県内の多くのかたがたに理解されたことがあげられる。しかし、それ以上に、現代の複雑な社会環境の中で生きる多くの児童生徒が、学校や家庭において、安定した自己の座を獲得することができず、心理的に苦悩し、危機的な状況にあることを物語っていると思われる。
特に、児童生徒を取りまく最近の家族構成が核家族化し、兄弟同志の意思の疎通がなかったり、親子関係の断絶から孤独になり、家庭外では情報通多の中にさらされて自信をなくし、友人や教師との人間関係の希薄化など、大なり小なり、それぞれに問題を持って生活していることがうかがわれてならない。
(二)相談対象の低年齢化
相談の対象者は一幼、小、中、高校生、一般、教員と幅広い。特に多いのは、小学生の三百人十九件、次に、中学生の三百五十三件、幼児の百八十九件と続く。(表1)
小、中学生の相談が圧倒的に多く、六十三%を占めていることは相談対象者が低年齢化しているといえる。
ここで思い当たることは、学業成績への劣等感、心と体の発達の不均衡、友人関係のひずみ、父母の養育態度や家族関係の問題など、身近な問題で幼い頭を大きく悩ましているといえよう。
次に注目すべきことは、教員が来談するケースがふえていることである。昨年度の来談件数五十七件に対し、本年度は七十二件と十五件の増(二十六%の増)である。
最近の問題行動が表3のように多岐多様で、対応のしかたにも困難な症例が多く見受けられる。しかも、増加の一途をたどる現実から、教師の生徒指導上の悩みも計り知れないものがある。しかし、なんとか解決の糸口を見つけ早期指導に当たるべく努力され、来談されているのである。
(三)相談のトップ--性格・行動
内容別に相談の延べ件数(表3)をみると、性格・行動に関するものが大部分で、全体の七十九%(九百四十二件)と高率を占めている。これは、集団の中で性格や行動に問題のある児童生徒で、登校拒否、内気、乱暴、落ち着きがないなどが入る。次に多いのは、身体、神経に関する相談で十九%(二百二十三件)にのぼる。夜尿、チック、神経症などの心身症状を訴える児童生徒が含まれ、心の病気がいかに多いかを示すものである。
なお、新しい傾向として、子供が親に乱暴する家庭内暴力がみられたのも本年度の特徴である。これは、外では温順でとてもよい子供なのに、家の中では親をなぐる、ける、難題を吹きかけるなどの乱暴をする行為で、外部に向けた非行的な暴力行為とは区別されるものである。
表1 地域別・対象別相談延べ件数
二、登校拒否の増加とその援助指導