教育福島0052号(1980年(S55)07月)-019page

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随想

 

奮いたて、現代っ子

 

砂子田 敦博

 

砂子田 敦博

 

現代っ子の異常ぶりを示すデータが相次いで公表されている。先日「骨を折る子供」のことが報じられたが、今度は「体温の低い子供」のことがレポートされていた。それらをみるにつけ、いろいろな面で既成概念ではなく新たな現状分析をした上で、より適切な対応がせまられてきているようだ。

生徒指導についての一般論については、これまでも各方面で数多くとりあげられ、それなりの追求はなされているが、自校生徒の具体的資料をまとめたものは少ないように思う。

本校においては「自校生徒について実態把握、実情を知悉することが教育の原点なり」との考えから、このほど全校生を対象に実態調査を実施し、関係の先生がたの努力で、七十余ページの資料として冊子にまとめあげることができた。

この実態調査は、高校生の非行が大きな問題になっている時期でもあり、その非行の背景や一般的な高校生の考え方について、「基本的な生活」「余暇」「学習・学校生活」「友人」「疲労」の六項目を軸に、更に内容を細分化して回答を求めたものである。そのなかから現代っ子を特徴づけるいくつかの事例を紹介してみたい。

起床時間は朝七時ごろが約六割、それも四割は家人に声をかけられてからのこと、その上、学校を出かける前に二十分程度はテレビを見ている。登校前に朝食をまったくとらない生徒、とっても時々という生徒を加えて約二割に達している。朝食をとる生徒でも、いつもテレビを見ながら食事をしている生徒は七割五分もあり、帰宅後もテレビに集中するので、家庭内での会話は極端に少なくなっている。また自分の家庭を楽しくない、苦痛であると答えている生徒が約一割、家出をすることを悪いとは思わない生徒も同程度の比率を示し、親に口ごたえすることを悪いとは思っていない生徒も四割にも達している。

仕事のことについては、家の手伝いはしたくないと答えているのが六割をこえており、自分からすすんで手伝う生徒は三割にもみたない。家庭生活のなかでは一日にテレビを見る時間は二時間から三時間程度が圧倒的で、なかには四時間以上と答えたのが一割強、就寝時間も十二時ごろと答えている生徒が三割もいる一方、二時間以上勉強する生徒は一割にもならない。その他の時間は深夜放送やレコードを聴いたり、雑誌やマンガを読むか、ゴロ寝、ボンヤリしている時間がおもなものとなっている。時間に対する計画性がないのに、自分の欲求については成績をあげたい、熱中するものが欲しい、思う存分遊びたい、良い学校や会社に入りたいとの希望は非常に強い。考査の前になっても計画的に勉強する生徒は二割にもならず、一夜づけですませている生徒は五割、特別の勉強をしないと答えている生徒も一割に及んでいる。しかも九割の生徒は自分だけの専用勉強部屋を持っているのである。学校生活では一番楽しい時間は休み時間であり、好きな教科は体育と答えている者が多い。尊敬する先生はいますかとの回答には約五割が「はい」としているのは多少の救いであろうか。

以上調査結果の一部にすぎないが、苦労することを好まず安易なものに妥協しがちな現代っ子の一面をのぞかせている。あまりにも豊かすぎる。恵まれた環境に育ち、物やお金の値打ちやありがたさを実感できない生徒を、なんとかして燃えたたせ、奮いたたせたいものである。そのために荒野の飢えたオオカミに戻すことも必要なことではないかなどと考えてみたりしている。

(福島県立福島工業高等学校教諭)

 

精神を集中して

 

精神を集中して

 

 

 


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