教育福島0052号(1980年(S55)07月)-026page

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わたしの研究実践

交通事故・違反の防止指導

 

福島県立喜多方工業高等学校教諭

大森 邦雄

 

一 はじめに

会津の豪雪を物語るかのように、屋根まで届く雪に囲まれた冷凍庫のような体育館の中から「螢の光」のメロディーが流れ、三百六十三名の卒業生が巣立っていく。

この卒業生一人一人の顔をみると、三年間の高校生活の中で忘れようにも忘れられない苦い思い出を秘めてこの学び舎を去っていく卒業生のいることも事実であり、それにもまして、三年前夢と希望を抱いて入学したにもかかわらず、学業半ばにしてざ折し、中退者として実社会に出ていった生徒たちのいたことも見逃がせない事実である。この中退者の中には"車社会"の犠牲者として尊い生命を失った若者やバイク事故の怪我が原因で再び学窓に戻れなかった生徒のいたことを思うとき心痛むこと切なるものがある。

この機会に本校におけるこの一年(昭和五十四年度)の生徒指導、特に重点目標の一つである「交通事故、違反防止の指導」に関し、その計画、実践について反省し、新年度の指導のあり方の糧としたい。

二 指導目標の設定

五十四年度の生徒指導部の重点目標として、次の三点を挙げ、生徒指導部を中心として全職員の共通理解を得て事故防止に努力することを申し合わせた。

(一) 交通事故、違反の防止

(二) 喫煙防止の指導

(三) 男女交際の正しいあり方の指導

これらの問題は、現在の高校生を取りまく社会環境を考えるといずれの高校でも抱えているものであり、特に本校のように男子中心の多様な生徒をかかえている工業高校であれば当然のことであると思われる。

三 本校における交通問題の現状

本校では従来、生徒のバイク免許取得について、原動機付白転車(五〇CC)に限って許可し、乗せて指導する方針をとってきた。しかし、高校生のバイクによる事故、違反が激増する中にあって、本校でも例外ではなく、その対策に苦慮しているところである。

(一) 五十三年度の状況

五十三年度に発生した本校での生徒の事故、非行のうち、交通事故、違反は、前年度より減少したものの、全体の四十四・三パーセントと高率を占め、その中でも交通三悪の一つである無免許運転が六〇パーセントに達している。これらの中に親のバイク(五〇CCとは限らない)を無断で持ちだし運転し指導を受けた生徒が含まれていたことは、家庭における指導監督という点で大きな問題である。更に三悪の一つであるスピード違反で指導を受けた生徒は二十三パーセントで、無免許と合せて八十三パーセントにも達する。

このことは、高校生がバイクとそのスピードにいかに大きな関心をもっているかを示すものであろう。

(二) 本校生のバイクに対する意識

−バイクに関する全校生へのアンケートから−

1「バイクに乗りたいか」との問いに対し、「いつも乗りたいと思う」そして「飛ばしてみたい」と答えたのは十八・六パーセント「時々飛ばしてみたい」と答えた生徒は四十九パーセントにも及んでいる。

このことは、本校生の大部分がバイクによるスピード感に対し並々ならぬあこがれをもっていることを示すものであろう。

2「在学中にバイクの免許を取得したいか」の問いに対しては「免許を取得したい」と答えたのは五〇パーセントを越え、それも学校で禁止している五〇CCを越える「大型バイクの免許を取得したい」と答えたものが三〇パーセント以上もいる。

3「バイクに乗る目的は何か」の間いに対し「何となく」「好奇心から」「すっきりする」「かっこいい」「レジャー」「面白い」「バイクは若者のシンボル」などと答えたものは四十四・三パーセントにも達した。

四 バイク指導の再検討

 

 

 


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