教育福島0052号(1980年(S55)07月)-029page

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親子読書サークル

「たんぽぽ」

 

矢吹町教育委員会

 

図書館コーナー

 

図書館コーナー

 

親子読書運動のあゆみ

昭和五十一年度に矢吹町が福島県の「文化のふるさと」に指定され、文芸教室「YYジャーナル」に集まった数名の若者たちによって「図書館もなく本に親しむことの少ない子供たちにたくさんの本を届けたい」一心で「親子読書運動」が始まった。やがてそのなかから親子読書サークル「のら」を結成して、町教育委員会からの百冊にも満たない図書をもって、夏休み巡回図書を実施した。

まさに「書をもって野に出よう」であった。これは現在の町公民館が実施している「移動図書」として発展していった。また、町立の幼維園のお母さんと園児たちと連帯して「親子読書運動」を推進させ、五十二年度からは、県立図書館の援助によりて六百冊、五十三年度以降は約一千冊の図書を借用して、親子読書サークル「たんぽぽ」「さわらび」「はこべ」「つくし」を誕生させ、貸し出し図書活動を続けており、各親子読書サークルが、ともに手ごたえのある活動を展開している。特にこの運動の中心となっているサークル「たんぽぽ」の活動を、その代表星野美子さんが次のように語る。

サークルたんぽぽのこと

最初スタートした「たんぽぽ」は四年目を迎えた。読み聞かせから育った子供たちがもう小学三年生になった。母親たちも社会に進出して共働き家庭が増え、その中で子供たちはテレビッ子になって野外で遊ぶ姿が少くなってきている。

矢吹町は、静かな緑の多い田園地帯であるが、国鉄東北線が町を二分し学区範囲が広く同じ学級の子供同士でも帰ってから遊ぶこともあまりない。そんな中で「たんぽぽ」の子供たちは、学年、学級、地域を問わず、月躍日は公民館に集まり、本を借り、仲間づくりを通して大きく読書の輪をひろげようとしている。

いま、子供たちは

お母さんたちが集まってきて、子供たちが楽しい雰囲気の中で本が選べるように和室いっぱいに一冊ずつ広げ、一目でわかるように準備する。子供たちとお母さんたちが本を手にして話し合いながら選んでゆく。選んだ本をさっさとかばんにしまって遊びにかけてゆく子、開いた本を夢中になって読みふけって動かない子、本の題名のかかれた一覧表をみて、読んだ本に○をつけその印がふえるのを喜んでいる子、様々な子供たちの様子が手にとるようにわかる。三年前、お母さんに読み聞かせしてもらっていた子供が、今、お母さんに、家族に上手に読み聞かせている。人前で話のできなかった子も積極的にみんなの前で読み、それが自信となって、何にでも真剣に取り組んで行ける姿勢が自然にできている。

さらに新しい試みを

親から子へ、子から友へ、サークルの子供たちは、読んだ本の楽しさを級の友だちへ、登下校の時など近所の友達と語らいながら、矢吹町には本を片手に歩く子供たちが多くみられるようになってきている。そしてお母さんたちも読書の環境づくりに、話し合い学習に懸命に努力している。

昨年、町の若者たちが掘りおこした民話の中から、たんぽぽのお母さんたちの手づくり絵本として、『かえるのおんがえし』ができあがった。それがたいへん好評で、絵本は誰にでもできる、作れるという感をみんなに与えたようである。今、サークル「のら」の若者たちが、その絵本の出版に懸命である。

たんぽぽの子供たちは、母親たちが熱心に絵本を作っている姿に感動し、今、自分たちでサークルの歌を作り、紙芝居を作ろうと張り切っている。

昨年の夏のハイキング、冬のおたのしみ会を盛りあげるために、一歩、一歩、積み重ねてきている。

たんぽぽの会員は現在三十名を数える。「のら」の五、六人から、この「たんぽぽ」「さわらび」「はこべ」「つくし」を併せると、百余名を数える大世帯となった。こうした運動の輪のひろがりの中で、地域の人たちがすぐれた精神活動としての価値を認識していくことと、自由に創造する活動がなされていくような条件づくりが必要となってくるのだろう。

(星圭之助)

 

 

 


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