教育福島0053号(1980年(S55)08月)-007page

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はじめに

新しい教育の方向

 

学校は、社会あってのものであり、その社会の変化と無縁に存在できるものではない。

社会そのものが六十年代から七十年代にかけて大きく変化してきており、その社会変化に伴い、学校教育も変わらなければならない必然性が生じていた。

六十年代後半からの技術革新による産業・経済の高度成長が、国民の生活や意識に大きな変化をもたらし、人間性喪失が大きな話題となり、人間のあり方や考え方を見直す必要性について各方面で論じられた。

特に、社会情勢とそれに伴う学校の状況の変化が、柔軟性に富む青少年に与えた影響は大きく、非社会的行動・反社会的行動が急増し、青少年の教育のあり方について、様々な批判や意見が寄せられた。このような情勢の中で、学校教育は新たな教育観に立って将来を構想し、進むべき方向を確立していくことが大きな課題となったのは当然といえよう。

今回の教育課程の基準の改善も、このような学校の現状や社会の情勢の変化を背景として行われたものであり、改善のねらい・方針の中で述べられていることは、今後の学校教育の方向を示唆するものとして、重要な意味をもっているものであることは、今さらいうまでもないことであろう。

○ 教育課程の基準の改善のねらい

自ら考え正しく判断できる児童生徒の育成を重視、次のねらいの達成をめざす。

1 人間性豊かな児童生徒を育てること。

2 ゆとりあるしかも充実した学校生活が送れるようにすること。

3 国民として必要とされる基礎的・基本的な内容を重視するとともに、児童生徒の個性や能力に応じた教育が行われるようにすること。

○ 学習指導要領改訂の基本方針

1 道徳教育や体育を一層重視し、知・徳・体の調和のとれた人間性豊かな児童生徒の育成を図ること。

2 各教科等の基礎的基本的事項を身につけられるように、指導内容を精選し、創造的な能力の育成を図ること。

3 ゆとりある充実した学校生活を実現するために、各教科の標準授業時数を削減し、地域や学校の実態に即して授業時数の運用に創意工夫を加えることができるようにすること。

4 学習指導要領で定める各教科等の目標・内容を中核的事項にとどめ、教師の自発的な創意工夫を加えた学習指導が十分展開できるようにすること。

要するに、これからの学校教育は、「人間性豊かな児童生徒の育成」を目指し(方向)て進まなければならないこと、そのために、「ゆとりと充実」「基礎的・基本的事項の重視、個性能力に応じた教育」等を十分考慮して教育活動に努めることが基本になろう。

特に、今回の教育課程の改訂において、「学校・地域の実態に即し、学校(教師)の創意工夫をいかす」ことを大きく取り上げていることも大きな特徴であり、今後、各学校の創意工夫、主体性が十分発揮されることを期待していることも心に銘すべきことである。

 

県内の各小学校においては、本年四月より、新学習指導要領に基づいて編成された教育課程により教育活動が展開されており、中学校においても、移行最終年度を迎え、明年度からの新教育課程編成にむけて着実な研究・実践が進められつつある。

これまでの期間に、新しい教育課程に関しては、様々な機会に研修が進められ、その編成について検討が進められてきている訳であるが、今後における教育課程編成・具体的な諸計画の作成、あるいはこれ等に基づく教育実践及び反省評価の各場面で、常に改善のねらい、改訂の基本方針等に立ちもどり、方向に誤りはないかを検討しながら進めることが極めて重要である。

 

次に、これからの学校教育を推進するうえで、教育に携わる者として、特に留意しなければならない事項を順を追って挙げておきたい。

 

一 本県教育の課題

 

県教育委員会は、教育課程改善の基本的な考え方に呼応し、昭和五十三年三月に「第二次福島県長期総合教育計画」及びこの計画を具体的に進めるための「第一期実施計画」(五十三〜五十五年度)を策定した。

これに基づいて立てられた昭和五十五年度の県教育委員会の重点施策は次のとおりである。

県教育委員会は、社会の急速な進展と県民意識の変化に対応し、

○ 豊かな教養と正しい判断力を持つ人間の育成

○ 個人の価値を尊ぶ人間の育成

○ 健康な人間の育成

の理念に立つ“未来をひらく、県民のための生涯教育”の実現を図るために次のような重点施策を掲げた。

1 県民の信頼と期待にこたえる学校教育の推進

2 心身の障害に応ずる養護教育の推進

3 あすをになう青少年の健全育成の推進

4 すべての県民が自ら学習する社会教育の推進

5 健康と体力づくりを図る社会体育の推進

6 豊かな心を育てる県民文化の推進

この重点施策を具体化するために、各施策を更に分析した諸施策を掲げそ

 

 

 


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