教育福島0054号(1980年(S55)09月)-010page

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2) 生徒理解を深めるために、検査結果の分析と解釈に関する学年研修会の実施

3) 進路相談の充実と相談技術の高揚

4) 父母の理解を得る活動の推進

 

二 実践内容

 

(一) 共通理解を図る校内研修会

進路指導の理念についての共通理解は、進路指導を実践していく上で、基礎的条件となり重要である。昨年、校内研修会で確認した事項は次のとおりである。

●新学習指導要領「総則」9(2)の背景を理解すること。進路指導は、従来から「教育活動全体を通じて」行うべきものとされていたのに、あらためて明示されたこと。「計画的、組織的」ということが強調されていること。

●進路指導は、個人資料、進路情報、啓発的経験、進路相談を手段として、生徒に自己理解を得させ、将来の生活を構想させる中で、生徒が自ら進路の選択や計画をし、よりよく適応ができるように生徒の自己指導の能力を伸ばすこと。そのために、教師が計画的、組織的に指導、援助する活動であること。したがって、受験指導即進路指導ではなく、自分の生き方を考えさせ、その目標の実現に向かって努力できる生徒を育成することが本質であること。たてまえが後退する進路指導にしないこと。

(二) 生徒理解を深める学年研修会の充実

進路指導の目標の一つに、進路の選択と決定が生徒の意志と責任においてできるようにすることがあげられている。そのためには、生徒の自己理解が正しくなされていることが必要である。しかし、中学生にとって自己を理解することは容易なことではない。自己理解を援助するためには教師の生徒理解が肝要である。

生徒理解のための資料収集には、観察法、面接法、検査法、調査法などがあるが、この中で、検査結果の分析と活用が十分でないことが多かった。これは、時間の制約と解釈に伴う困難性が考えられるが、資料の活用を図ることが、進路指導を前進させる一方法となることから、本年度の努力事項に掲げ実践してみることにした。なお、検査実施状況と、分析・解釈のための研修計画は表1のとおりである。

 

表1 検査実施状況と研修計画 (●は研修を示す)

検査項目一年二年三年
知能検査 
診断的学力検査 
AAI 
職的検査  

 

新学習適応性検査結果を教育相談や家庭訪問に活用した実例

 

進路指導の年間計画に従い、生徒の実態把握として、新学習適応性検査を実施し、次の順序で、生徒個々の進路指導に役だてた。

1) 検査の目的・処理・結果の活用方法の計画(四月下旬)

2) 実施後、学年部会による資料の見方、考え方の研究会〈七月五日)

3) 教育相談および家庭訪問による個々の指導(七月上旬〜下旬)

4) PTA学年部会における資料の結果説明と家庭における協力依頼(七月十五日)

資料1は、二年のある学級の男子生徒の結果である。この結果を見ながら学年教師会において次のような分析および対策を話し合った。(七月五日)

その後担任を中心とした教育相談の一つの資料に活用した。

 

学年の研究会内容及び事後指導

 

出席番号5の生徒は応答に一貫性がなく、ふだんの生活面がよく表れている。特に問題となるのは、精神・身体の健康面であり、自主的な生活態度の欠如と神経質な点が原因として考えられる。その対策として、日常の生活における観察強化と“ひと声運動”を推進してみることにした。

出席番号8の生徒は学習環境・精神・身体の健康について友人関係や学校での学習環境への指導の強化が必要である。その対策として、教育相談と家庭訪問(七月中旬)を実施した結果、数学が得意なので、そこからの学習意欲を高めるための具体策を話し合った。

出席番号13、14の両生徒は、共に学習態度・学習技術の面が低く、平日の家庭学習時間も少ない。生活面でも友人として仲が良い。ふだんの観察からも同じような判断ができていたが、検査結果と一致している。この二人は、知能が悪くない反面、家庭環境において、放任された面があり、本人の学習に対する我々の意図的指導の手だてが不足していたという反省意見がだされた。そののち、担任の教育相談により、夏休みの学習課題の解決方法について話し合った。出席番号20の生徒は(ツシオマトリックスからも孤立児であるが)学校の環境を中心とした学習環境に問題点が見られ、学級全体の中での解決策が必要であると思われた。

 

 

 


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