教育福島0054号(1980年(S55)09月)-035page

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つである。

 

五 教職員の欠格条項

 

公務員は、全体の奉仕者(憲法第十五条)として公務を遂行するものであるから、それにふさわしい条件を欠く者を任用することは、公務の本質からみて適当ではない。地方公務員法第十六条は、職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない欠格条項として次のように定めている。

1 禁治産者及び準禁治産者

2 禁こ以上の刑に処せられ、その執行を終るまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者

3 当該地方公共団体において懲戒処分を受け、当該処分の日から二年を経過しない者

4 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者

以上は、地方公務員に共通した欠格条項であるが、校長及び教員については、児童、生徒の教育を職務とすることから、その職務の特殊性に鑑み、更に厳しい欠格条項が定められている。

・禁こ以上の刑に処せられた者

・免許状取上げの処分を受け、二年を経過しない者

以上の欠格条項に該当する者は、教職員となることはもちろん、現に職員である者が欠格条項に該当するに至った場合には、当然にその職を失うことになる。

なお、教員については、教育職員免許法に基づいて授与される各相当の免許状を所有していること(教育職員免許法第三条)が必要である。

 

六 任用に関する法律問題

 

任用は、具体的には、任命権者が辞令を用いて任命する行為により行われる。以下任用に関する法律問題について述べる。

(一) 条件付採用

教職員の職に欠員を生じた場合には教職員組織の新陳代謝を図るうえからも一般的には、大学卒業者又は高校卒業者を採用することが多い。この新採用教員、新採用事務職員は、六月間は条件付採用であり、その間良好な成績で職務を遂行したときに正式採用となる。その間成績不良で職務遂行能力のない職員を免職する場合には、労働基準法第二十条の規定が適用され、解雇予告するなり、解雇予告手当を支払わなければならない。(昭和三八年十一月四日、基収六三二号)

公立小中学校教職員については、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第四十条の規定により、同一県内のA市公立学校教職員を免職し、引き続き他の市町村の公立学校教職員に採用されることになる。この場合は、条件付採用の規定は適用除外されている。

(二) 降任

一般的に降任は、本人の意に反して行われる場合が多い。したがって分限に係る問題となる。本人の意に反して降任される場合は、勤務実績が良くない場合、心身の故障のため職務の遂行に支障がある場合、任命された職に必要な適格性を欠く場合等である。(地方公務員法第二十八条一項)

なお、教務主任であった者が次年度に主任を命じられないとしても、ここでいう降任には該当しない。

(三) 転任

毎年度末人事において最も件数の多い任用の方法は転任である。

なお、小中学校教職員が同一県内において市町村を異にして異動する場合には、一の市町村の教職員を免職し、他の市町村の教職員として採用される(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第四十条)のであって形式的には転任ではないことに留意する必要がある。

学校は県内各地に設置されており、学校数も多く、自宅から通勤不可能な転任も多く、しばしば問題となる場合がある。このことについて裁判所は、「転任により下宿を余儀なくされ精神的、物質的負担が生じたとしても、本来教職員として公の教職に従事する者は転任のあることを当然予測すべきであり、その負担を受忍しなければならない。」(昭和四一・四・一二福島地裁)と判示し、また「自宅から通勤不可能な地域への転任処分により別居生活を営む等精神的、肉体的にも多少の負担になることがあっても、地方公務員としてこの程度の不利益は受忍すべきものというべく、任命権者の裁量として許される」(昭和三六・一・二三仙台高裁)と判示している。

(四) 臨時的任用

1)災害その他重大な事故のため、正式に職員を任用するまでの間欠員にしておくことができない緊急の場合 2)臨時的任用を行う日から一年以内に廃止されることが予想される臨時の職に関する場合 3)任用候補者名簿に任用候補者がない場合には、人事委員会の承認を得て、一年以内の期間で臨時的任用を行うことができる。(地方公務員法第二十五条二項、職員の任用に関する規則第三十三条)

産休補充教員、育休補充教員については、地方公務員法第二十二条第二項から第五項までの規定は適用されない。

(五) 期限付任用

期限付任用に関しては明文の規定はない。しかし、合理的理由があり、本人の同意があれば、労働基準法第十四条(一年を超えない期間)の規定に反しない限り、任期を限って採用できる場合があるものと解されている。(行実二七・一一・二四自公発第九七号。昭和三八・四・二最高裁判決)

期限付任用の場合は、期間満了によって当然失職する。

 

 

 


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