教育福島0054号(1980年(S55)09月)-036page
高校生の読書生活
県立図書館館外奉仕課長
赤座信道
図書館コーナー
県立高校司書研修会で、学校司書のいる六十六校の二年生を対象に「読書生活」と「学校図書館」について実態調査を実施したまとめについてふれてみる。(昭和五十四年十一月調査)
一 読書量と時間(資料1、2)
テレビ、マンガそして受験戦争が現代っ子から本を避けるようにしてしまったと言われるように、ゼロ冊生徒が広がる傾向は、とどまることを知らない。読んでいるものでも、月に一〜三冊どまりで、読書らしいものをしているものは男女とも十五パーセント前後しかいない実状を見せている。時間にしても三分の二は三〇分以下で、一時間以上は、一〇パーセント程度にすぎない。読まない原因は何なのか、果たして勉強だけに没頭しているためなのか、読みたくないのか、このあたりを探る必要がありそうだ。
二 読んだ本、読みたい本(資料3、4)
男女とも「こころ」が上位を占めていて、まだまだ古典が読まれているが、「戦国自衛隊」「天中殺入門」「歴史をさわがせた女たち」といった話題作や娯楽的な読み物に集中している。それは、読む目的のなかでも、娯楽、趣味などとしての読書が非常に高い割り合いを示している。読みたい本についても同じことが見られ、ますます軽読書の傾向が深まっていることがわかる。
三 感銘を受けた本、好きな作家(資料5、6)
「こころ」そして「夏目漱石」がトッブにランクされている。これはかつて教科書で読み、そのユーモアや登場人物の心理描写のうまさにひきつけられて読んでいるものであろう。横溝、森村、星、芥川等が読まれるのも同じような理由であろう。しかし、大量宣伝の中で、これらを読んで、こと足れりとするようでは心もとなく、もっと積極的な読書姿勢が必要ではないだろうか。
数字からは軽読書化が見られるが、読書の目的、読みたい本にはまだまだ「教養として」「哲学・思想」といった分野にも相当の数字を見せていることから見れば、的確な読書指導が行われれば、生徒たちは、もっと読書ずきになるであろうし、実になる読書を身につけることができるのではあるまいか。それには、教師自身の読書を通したふれあいを持つことが必要ではないだろうか。学校図書館についてはまたの機会にふれたい。
資料1 1か月に読んだ冊数
男 女 人 % 人 % 0冊 3,255 39.1 2,724 32.1 1〜3冊 3,515 42.2 4,287 50.5 4〜6冊 834 10.0 838 10.0 7〜9冊 117 1.4 131 1.5 10冊以上 301 3.6 130 1.5 無回答 305 3.7 374 4.4
資料2 読書時間(1日平均)
男 女 人 % 人 % 0下以分 3,155 37.8 2,713 31.6 29分以下 2,503 30.0 2,593 30.2 30分以上 1,590 19.0 1,973 23.0 1時間以上 587 7.0 749 8.7 2時間以上 310 3.7 297 3.3 無回答 210 2.5 267 3.1
資料3 1か月間に読んだ本 出度数の多かったものから15点(数字は度数)
男 女
1 こころ137 1 赤毛のアン 112
2 戦国自衛隊 103 2 こころ79
3 老人と海 89 3 人間失格 77
4 文中殺人間 61 4 四季・奈津子 75
5 人間失格 48 5 風と共に去りぬ 73
6 坊っちゃん 26 6 歴史をさわがせた女たち 54