教育福島0055号(1980年(S55)10月)-008page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

させるために、教室内のスピーカーから生徒の好きな歌(英米の最新ヒット曲)を流す。事前に生徒からアンケートを取り、曲目(過去には、カーペンターズの"Top of the World"やジョン・デンバーの"Take Me Home" "Country Roads"等を実施した)を決め楽譜を配布する。

(七) 聴解練習(再)

提示及びcheck-upの方法は、前述(四)の聴解練習と同じであるが、ここでは、アナライザーを使い、電動タイプに記録するとともに正答を提示し、誤りの多い個所を全生徒に指摘する。

(八) 書き取り練習

録音させながら、本時の目標文を含んだ書き取り練習をする。解答用紙を配布し、空白部分を埋めさせる。分からない生徒にはテープを何度も再生させ、書き取らせて提出させる。

 

四 LL授業を実施して

 

前述したような展開で、毎時のLL授業を実施してきたが、気がついたことを述べてみたい。

1) あいさつの時、簡単な英語を使って話したり、聞いたりすることは、身近な英語への関心を示し、英語使用の意欲を起こさせるのに有効である。

2) 実際の場面を想定し発表する対話は、復習(暗記)の不足も手伝い、表情、ジェスチャーが出る行動まではいかない。

3) 問題にもよるが、聴解力一回目の全体の正答率は七、八〇パーセントぐらいで、二回目のそれは、ほぼ百パーセントである。

4) モニタリングをして気がつくことは、テープの発音を自分が思い込んでいるように聞いてしまう。例えば、テープがAustraliaを〔◆:str◆ij◆〕と発音していても、この発音は「オーストラリア」であると思い込んで発音してしまう。

また、Weak formsなど、文中で弱く発音する英語独特のリズムに気がつかず、どの語も同じように発音し、英語らしく発音できない生徒も目につく。

5) 書き取りでは、文の意味を理解しようとせず解答用紙の空白部分のところだけを聞き取ろうとし、聞こえた通りの単記を記入してしまう。

また、Weak forms聴取には困難をきたし書き取ることができない。

6) 普通授業の試験が高得点の生徒中に、聴解力一回目の正答率が低い生徒もいる。

7) 休憩で流す英語の歌には、反応が大きく「英語の歌を利用して勉強したい」という生徒も多い。音楽に興味を持ったかなり学力の低い生徒が、きれいな発音で歌を披露した時には驚き、全員で拍手をし激励の言葉を与えたことがある。

8) 学期に二、三回利用するNHK学校放送のVTR利用には、生徒が興味を持ったり、共鳴したりする内容が多く、英米人の物の考え方、文化、風俗や習慣を知るのに大いに役だっている。

9) 四月と十二月に実施した英検三級の聞き取りテストの結果を比較してみると、聴解力は抜群の成績で伸びが見られる。

 

五 生徒の感想

 

LL授業を受けた生徒はどのように受けとめているか、感想を紹介する。

「週に一度LLがあるということは、本当によいことだと思う。教科書からはなれ、特別教室で授業を受ける緊張感があるから頭によく入る」「LLをやっていると、第一に発音がよくなったと思う。発音がよくなるということは、その単語を理解する上で大変よいことだと思う」(男子生徒)

「あと一時間ぐらい増やして欲しい、やはり普通の授業よりいい。会話の力などがこの授業で身についたと思う」「英語のできない人にとって、ここでの授業はちょっときついと思う。周囲の人にも聞けないし、それだけが欠点です」(女子生徒)

 

六 LL授業の成果と今後の課題

 

週一回であるが、LL授業によって英語の音声に慣れ、大分聞き取れるようになったことは、聴解力の増進という目標に一歩近づいたと思う。

また、発話力をつけるため(幼児が言葉の習得に模倣から入るように)、模倣、反復練習し、覚えた会話文を少しでも表情・ジェスチャーを入れる心構えで対話を練習させたことは、より効果的であったと思う。そのため、覚えた文を使って自分のことや、身辺のことを自己表現する第一段階までは到達できたと思う。

それでもなお、英語の基礎的、基本的な力不足が随所に見受けられる。やはり、LL授業をより効果的に行うためにも、基礎力をつけていかなければならないという根本的な問題が残る。

そして、そのような問題を少しずつ解決したうえで、学んだことを「使える」という喜びを、より以上に味わえる方向へ持っていきたいと思う。

 

七 おわりに

 

私の実施したLL授業は、経験も浅く「計画→実践→反省」の繰り返しで満足のいくものばかりではなかった。しかし、生徒の感想を読むと、これからますますよりよいLL授業を目指さなければならないという意欲が湧いてくるのである。

中学校、高校のLL設置に対して、文部省から助成金も出るということで設置校も増えるものと思われる。

このような状況下において、私たちは今以上にLLのような機械を活用しての語学学習を無視することはできない。LL授業を実施するに伴う様々な問題点はあるが、実践しての効果をまのあたりに見ると、生徒の英語学習に役だつようなLLの利用を考え、大いに活用していくべきであると思う。

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。