教育福島0055号(1980年(S55)10月)-013page
と思われないもの。
2 番組の事実のみを、断片的に説明しているだけのもの。
3 番組の内容に思考が加味され、番組以外の事柄にまで、問題を展開して書いているもの。
4 問題点の解決方法まで述べ自分の経験と結びつけて、実践への意欲が認められるもの。
五回の放送を聴取させ、生徒の記入した視聴カードを観点別に集計した結果、K・J法図解を併用して視聴した実験群の生徒の方が、内容の記述が正確であり、発展的にとらえているのが多かった。また放送の視聴回中を重ねるごとに、統制群、実験群ともに内容理解の深まりがでてきており、継続視聴の効果が実証された。(表3)
三 結果と考察
1 事後テストの検定(表4)により実験群と統制群の間に有意差が認められたのは、仮説が有効であったと考えられる。
2 有意差のでた小問の出題内容は、放送内容に関係がある倫理的つながりを求める問題であり、K・J法図解の併用視聴に効果があったと推定できる。
K・J法図解の併用視聴を、生徒はどう受けとめたかについては、次の生徒の感想文からみて高く評価していることがわかった。
◎ 図解をみながら聞くと、今までなんとなく頭の中をかすめていった言葉が、文字として目の前に残り、また論理的つながりが楽にでき内容がつかみやすい。
◎ ただ放送を聞いただけでは、いくらメモをしていても何が中心であるのか、大切な部分を聞き逃したりするが、図解があれば要点の把握が容易で、しかも理解が深められる。
四 K・J法学習の実践
K・J法学習の効果は、生徒の思考力、創造力の深化と、情報のデータを素材として「統合する能力」が育てられる点にある。教師が教えるのではなく、生徒自身で情報を集めそれを基にして各グループごとに討議し、結論をみつけていくことにあり、教師主導型の講義式授業とは本質的に異なる点がある。授業実践では、放送教材「核家族」をもとにテーマとして「最近老人の自殺、えい児殺し、子捨てが急増しているが、その原因は何か」を設定しK・J法学習を展開した。進学校である本校では、講義式中心の授業が普通であり、またそれが当然のように思っている生徒の実態の中で、まったく経験のないK.J法学習を、どのように思っているか不安であったが、K・J法授業後のアンケート調査の結果をみると、多少の問題点はあるにしても、その効果の大きいことが認められた。
(生徒の感想)
● ある問題を深く堀り下げていくと、関係のないような事項でも、必ずどこかでつながっている。そんな社会のしくみ、因果関係をK・J法で学びとった。
● 普通の授業では、あまり考えるということはないが、K・J法学習によって、考える力、まとめる力がついたように思う。今までの授業形式を破った楽しい授業であった。
● K・J法は問題を順序だて、結論を導くので理解しやすい。また教科
表3 視聴カードの分析
観点 1回 2回 3回 4回 5回 統制 実験 統制 実験 統制 実験 統制 実験 統制 実験 1 4名 2名 4 2 3 2 2 1 1 1 2 19 15 17 10 15 6 13 6 12 7 3 7 9 9 12 10 14 13 15 12 13 4 5 9 5 11 7 13 7 13 10 14
表4 事後テストの正答率の検定