教育福島0055号(1980年(S55)10月)-014page

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書のように結論が一つだけでているのでなく、自分たちだけで見つけだすので大変興味を持った。

 

五 おわりに

もし、この授業が教師中心の講義式で終わったら、多様な考えは授業の中からはでてこなかっただろうし、なによりもそこからは、生徒の主体性や創造性は生まれず、知識中心の受身的な抽象的思考で終わってしまい、倫社の目標には到達できなかったと思う。

最近の大学生の自殺増加の原因について京大の石井助教授は「何よりも大切なものは、暗記とテクニック一辺倒の教育から、考える筋道を大切にし、一つの問いに二つも三つも答えが可能な教育をしていくことだ。そこから互いの個性と創造性を大切にする気持ちが生まれるし、自由に未来を切りひらき、他者とのかかわりを重んじる姿勢が育ってくる」と述べている。生徒の感想と石井助教授の訴えとが、はからずも一致しK・J法学習こそまさしく石井助教授の指摘する教育方法であると考え、生徒自らが考え、探求していき、結論がでていないものを、自分たちで見つけだしていく、そんな授業を現在の高校教育に求めていることを知り、その要望を満たしてやるのは、高校教師の責任であることを痛感し、今度更に、研究を深め、よりよい授業実践をしていきたいと思う。

 

芸術

構想による表現

「風」「雨」「雪」など

福島県立安積高等学校教諭

三瓶順雄

 

はじめに

いま、高校での絵画指導の中心となっているのは、写生的な表現であろう。それは、高校生の発達段階に照しても妥当であり、観察を通して表現する過程の中で、美的感覚を豊かにし、創造の喜びを体得させることができる。

しかし、現代の美術が、より主体的直接的に自己のイメージを表現しようとするものである以上、そのような表現の指導もおろそかにはできない。

ただ、その指導はどうあればよいのか。かなりの工夫が必要である。以上その一つの試みを紹介してみる。

 

一 題材設定の理由

本校の場合、生徒の学習への取り組みはまじめで意欲的であるが、一方、失敗せずにうまくやろうとする傾向が強く一年生では、「ここはどう描けば良いのか」どんな色を使えば良いか」などの質問も多く、消極的である。

また、目標が明確な作業的な学習には安心して取り組むが、自分で発想し、工夫するということには弱さがあるように思われる。

したがって、指導に当たっては、美術は教えられるものではなく、主体的に表現や鑑賞に取り組み、自分で工夫し発見することに意味のあることを強調し、指導計画は、(一)自分の目標を持つ (二)失敗を恐れず、創意工夫する (三)発見することのできる場の設定であるよう留意している。

さて、この「構想による表現」は、二年で行うが、一年では、写生的な題材を主に、絵画表現の基礎主題の把握、構図、色彩、明暗、バルール、単純化、デフォルマションなどに気づかせてきた。二年では、絵画、彫刻、デザインから選択して学習させるが、その選択に先立って、より積極的な自己表現を経験させることを目標に設定した。

 

二 目標

(一) 自由な発想・連想などによって、豊かなイメージの生成をうながす。

(二) イメージを造形的に表現する能力を高める。

(三) 現代美術への理解を深める。

 

三 指導計画

(一) 導入 一時間

教科書の作品を鑑賞させ、学習の目的を理解させる。

(二) ラフスケッチ 三時間

ラフスケッチによって、構想を練らせる。イメージを明確にさせ、主題は「何か」をたしかめさせる。

(三) 制作 八時間

画面の構成、表現材料などを工夫して制作させる。

(四) 鑑賞 二時間

作品をグループ及び全員で合評し、作者のイメージを主体的に表現する現代美術への理解を深めさせる。

 

四 指導過程

 

 

 


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