教育福島0055号(1980年(S55)10月)-015page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

(一) 導入

教科書の作品を鑑賞させる。(それらの作品が、写生ではなく、作者のイメージを造形化した制作であることに気づかせる。)

学習の手順を示し、学習への心構えを持たせる。(用具の準備も)

(二) ラフスケッチ

鉛筆、色鉛筆、コンテなどで構想を練る。イメージを明確にし、適切な形象を想起させるため、次の助言をする。

1) 体験、想い出、又は文学的な感動など、題と自分とのかかわりあいについて考えさせる。「昨年は題を雪だけにしたが、雪景色や雪だるま作りなどの作品がかなり出た。反省してみると、君たちの住む郡山と雪というのはそれほど切実な関連がなかったからだと思う。今回、題の範囲を広げたのはその反省からで、題を客観的に扱うのではなく、自分の内的なものとのかかわりという点で考えてみよう」

2) 「選んだ題に、あまり真正面から向き合うと、型にはまったものとなりやすい。連想を働らかしてみよう」

(雨、と枚書し、指名して答えさせる。傘、長ぐつ、水溜り、あじさい、爽やかさ、憂うつ、かび、生命力…はじめまごつくが、次第に内的な連想に発展する。)

3)「どうしてもイメージのわかぬものは、錯画を描いてみよう。そこでできた形から、イメージを具体的なものにして行けないか」

以上の手だてで、生徒の仕事を軌道に乗せていくが、具象的な形を必要とするものは、スケッチや、図書館での資料収集をさせる。

4) 制作

構想のまとまったものから、次の点を検討させ、表現材料や方法に応じてキャンバス(FlO)かイラストボード(B3)を選ばせ制作させる。

検討事項(板書)○表現したいものは何か(欲ばりすぎていないか) ○説明的になりすぎていないか ○構図は工夫したか ○主となる色調を考えたか ○材料、用具、方法など考えたか

以上の点については、机間巡視でも問いかけるが、偶然の効果にも期待を持たせ、あまりうるさくなって生徒の意欲をそがぬよう留意する。

(四) 鑑賞

表現の終わった後、常に合評の時間を設けて話し合わせ、反省と、他を理解し自己を拡大する場とさせているが、次のような方法による。

1)グループでの合評(五〜六名の班)

司会と記録を選ばせ、司会のリードにより班員の作品を鑑賞させる。記録には、要点を記録用紙に記入させ、合評後に提出させる。

合評の方法は班により異なるが、全部を展示して、特徴のある点から話し合わせる。作者の反省を語らせてから話し合わせる。全員に感想を話させてから作者の考えをただすなどが主で、二年生になると活発である。

2)全員での合評

グループで最も話題の多かった作品を一〜二点提出させ、それを展示し、司会にグループで話題となった点などを報告させ、それをきっかけとして話し合わせる。教師は司会として話し合いを誘導し、問題点を整理する。

 

五 学習に対しての反応

合評に先立って、この学習に対する感想を、アンケートによって調査した。結果は、次のとおりである。

学習に興味を持てたもの、百七十三名中、百十六名(六十パーセント)

興味が持てなかったもの、五十三名(三十一パハセント)

もどちらともいえない、四名

また、そう回答した主な理由や、技法等の面についての感想を、(一)興味を持ったもの (二)興味が持てなかったもの別にまとめると、次のようになる。

(一) 興味を持った(百七十三名)

1)主な理由

考えを自由に表現できる 五十一名

対象に拘束されずに描ける 四十四名

自分の内面を表現できる 九名

種々の発想を楽しめる 六名

他の人と比較されない 二名

良い構想がうかんだ 二名

写生より技術がいらない 一名

写生的な表現は好まない 一名

2)技法的な点についての感想

思った通り描けず苦労した 五十一名

拘束がなくのびのび描けた 四十六名

勝手に描けて楽しかった 七名

モデルがないので迷った 六名

色彩に苦労した 四名

気分の乗らない日もあった 一名

3)これまでに学習した絵画のうち、最も興味の持てたもの

○構想画六十六名 ○風景画二十一名 〇デッサン十三名 ○人物画十二名 〇静物画三名 ○全部二名

(二) 興味が持てなかった(五十三名)

1)主な理由

構想がまとまらない 二十五名

思うことが表現できない 十名

見えないもので絵にしにくい 六名

抽象は嫌い 三名

写生が好き 三名

思いつきはつまらない 三名

題が決められない 一名

ものまねになってしまう 一名

2)技法的な点についての感想

思った通り描けず苦労した 三十名

モデルがないので迷った 十六名

拘束がなくのびのび描けた 四名

勝手に描けて楽だった 二名

背景の処理が難かしい 一名

3)これまでに学習した絵画のうち、最も興味の持てたもの

○風景画三十一名 ○デッサン九名 〇静物画三十一名 ○人物画四名 〇構想画二名 ○全部一名

 

六 反省と問題点

アンケートの集計に見られるように

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。