教育福島0055号(1980年(S55)10月)-017page

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農業

基礎事項理解のための工夫

福島県立相馬農業高等学校教諭

門馬修一郎

 

一 はじめに

 

農業高校の農業に関する学科に入学してくる多様な生徒の実態の中で、特に、農家の子弟であっても、農業経験のない者、農業への興味、関心を持たない者など、家庭生活における経験や勤労体験等の基礎的、基本的生活習慣の欠如がみられる。また、農業技術の進歩により、学習内容の量的・質的な拡大と高度な専門分化へ発展し、農業分野の基礎となる農業生物への育成に関する学習の取り扱いが弱まる傾向が出てきた。そこで農業の基礎的な学習や体験をとおして、将来の変化に対応できる基礎的な能力の養成が叫ばれると同時に、農業教育は職業人としての完成教育をめざすのではなく、職業人としての資質の練磨と正しい職業観を育て、人生の道しるべとしての基礎的能力と態度を養うことを目的として、農業教育に基礎教育が重視されるようになった。

本校においては「農業教育において基礎的な技術と経営能力を育成するために、その教育内容および指導について」を現職教育のテーマとしてとりあげ、多様な生徒の実態に対応することのできる指導は如何にあるべきか、授業、実験、実習等をとおして多面的に取り組んでいるが、日常の実践活動の中で、

・どのようにして学習への興味、関心をよびおこし、学習意欲を高めることができるか。

・どのようにして基礎的事項を確実に習得させることができるか。

これらは容易な課題ではない。これに対応する一つの方法として、第一学年科目「園芸」での基礎学習の指導強化を図ってみた。

 

二 基礎学習指導への取り組み

 

農業教科、科目の指導のあり方として、学習項目ごとに具体的に到達目標をあげ、学習の場を教室・実験圃場に分けたやりかたは、問題の多いところでもあった。特に圃場で展開される教科内実習では、総花的な実習形態になりやすく、農場管理の実習になりかねないし、実習項目も細分化され、座学と作物の生育段階に応じた実験・実習の関連もうすくなり、断片的な知識の習熟に終わって、学習内容が体系的に理解されないという反省があった。

そこで、農業の基礎的な指導内容を精選、明確化し、園芸作物栽培の体験学習をとりいれ、座学との関連を図ることによって、一体化した基礎的学習を展開することができるのではないかという考えから、指導計画に当たっては、次のような基礎的教育内容の観点にたって、園芸作物の生理、生態を生育段階にあわせて指導内容を具体化し、授業の展開を図った。

(一) 農業の各分野が共通の基盤に立つことを理解させ、専門学習への導入を図る内容であること。

(二) 生命体の育成にかかわる原理・原則であること。

(三) 農業の本質・意義を理解し、基本的な農業技術の体得ができる内容であること。

(四) 自ら問題を解決する能力の開発・形成に役だつこと。

 

三 年間学習指導計画作成の方針

 

指導項目、内容の選択、その配列順序は、生徒の実態や、教師の教材観によって異なるのは当然であるが、次のような方針で作成した。

(一) 科目「園芸」を「園芸作業栽培の基礎学習」と「栽培体験学習」にわけ、両者の有機的関連を重視する。

(二) 指導内容の不必要な重複をさけ、基礎的、基本的事項が欠落しないように留意するとともに、教材の季節性を考慮して指導項目を厳選する。

(三) 座学と実験、実習との関連を重視する。

(四) 「栽培体験学習」は、プロジェクト学習内容として展開する。

 

四 学習の進めかた

 

一斉指導による授業展開を図るが、生徒の学習活動の位置づけを明確にして、自発的学習の態度、習慣を育て、学習意欲を高めることができるように配慮した。

(一) 「園芸作物栽培の基礎学習」について

・月ごとに学習内容を予告し、週ご

 

 

 


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