教育福島0055号(1980年(S55)10月)-022page

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特集

重度・重複障害児の学習指導

 

一 はじめに

養護学校教育の義務制は、昭和五十四年四月一日から施行された。これにより、それまで就学義務の猶予、免除の対象とされてきた学齢児童生徒の多くに学籍を与えることとなり、盲、聾、養護学校に入学することとなった。

これまでの学校教育の考えでは、教育は不可能とされてきた児童生徒を受け入れることとなった諸学校においては、新しい学校教育のあり方のみなおしと実践という課題を避けて通れない状況にある。このことは、通常の小学校、中学校、高等学校における教育のあり方の変革にも波及するものでなければならない。

しかし、重度・重複障害児に対する教育の実践、研究ははじまったばかりである。わからないことの方が多い。本県では、このことにかんがみ、今年度から、盲、聾、養護学校を指定対象とした研究校を二校ずつ指定し、二年継続研究として、重度・重複障害児に関する教育方法の開発に着手した。その成果は、後日、発表の機会を設けて公にする予定である。

ここでは、研究指定の対象としている重度・重複障害教育について述べる。

 

二 重度・重復障害児とは

「重度・重複障害児」には、これまで「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」等で定められている重複障害児(学校教育法施行令第二十二条の二に規定する障害−盲、聾、精神薄弱、肢体不自由病弱−を2以上あわせ有する者)のほかに、発達的側面からみて、「精神発達の遅れが著しく、ほとんど言葉を持たず、自他の意思の交換及び環境への適応が著しく困難であって、日常生活において常時介護を必要とする程度」の者、行動的側面からみて、「破壊的行動、多動傾向、異常な習慣、自傷行為、自閉性、その他の問題行動が著しく、常時介護を必要とする程度」の者を加えて考えた。(「重度・重複障害児に対する学校教育の在り方について」特殊教育の改善に関する調査研究会会長辻村泰男、昭和五十年三月三十一日)

重度・重複障害児に関する概念について公的に言及しているのは、文部省初等中等教育局長あてのこの報告だけである。

この報告では、判定に当たっては、一時の審査だけによるのではなく、一定期間観察したり、これらの者に対して指導してきた関係者の意見を聞くなど慎重を期す必要についても述べ、参考として「重度・重複障害児の判定にあたっての検査項目例」(表1)をあげている。

なお、学校教育法施行令第二十二条の二に定める「盲者等の心身の故障の程度」は、表2のとおりである。

表2の精神薄弱者の項において、「精神薄弱の遅滞の程度が中度以上のもの」とは、重度の精神薄弱及び中度の精神薄弱者を指し、重度の精神薄弱者とはほとんど言語を解さず、自他の意志の交換及び環境への適応が著しく因難であって、日常生活において常時介護を必要とする程度のもの(知能指数(IQ)による分類を参考とすれば、二五ないし二〇以下のもの)…(「教育上特別な取扱いを要する児童・生徒の教育措置について(通達)」昭和五十三年十月六日参照)となっている。

 

三 教育課程

盲、聾、養護学校における重複障害児を教育する場合又は訪問教育を行う場合においては、学校教育法施行規則第七十三条の十二により、特別の教育課程によることができる。ここでいう特別の教育課程とは、小学部の教育課程(同規制第七十三条の七)、中学部の教育課程(同七十三条の八)、高等部の教育課程(同第七十三条の九)に定める各教科、道徳、特別活品並びに養護.訓練等によらなくてもよいという例外規定であり、教育課程の基準となる「盲学校、聾学校及び養護学校学習指導要領」による(同第七十三条の十)という規定をもはずして教育課程を編成してよいということである。

しかし、重複障害児に対する教育が公教育の一端を担うものであるかぎり、指導内容の公正の確保を考えるとき、よりどころとすべきものは、当然あるわけであって、それは、「盲学校、聾学校及び養護学校小学部・中学

 

 

 


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