教育福島0055号(1980年(S55)10月)-035page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

(三) 目標

1) 安積の原野を開墾して田畑にしたいという昔の人々の強い願いが、安積疎水を完成させ、今日の郡山市発展の基礎をつくっていったことを理解させる。

2) 身のまわりにある過去の社会事象について、聞きとりや文章資料、遺物の観察などによって調べ、文章、地図、年表にまとめたり、その意味を読みとったりすることができる。

(四) 地域教材の開発と授業の構成

1) 新教材の必要性

従来の安積疎水の指導は「どのようにして作られたのか」に指導の重点がおかれ、「なんのために」の追究は知識の注入で終ってしまいがちであった。そのために、先人の努力や苦心を表面的にしかとらえられなかった。安積疎水がなんのためにつくられたかを、当時の人々の生活や願い、用いた技術、土地の様子などから具体的事物や事象を通して追究させ、一くわ、一くわ荒地を耕やしていった先人の苦労や、安積原野に水をひき、水田にしたいという人々の強い願いを実感として把握させていく必要がある。

2) 地域素材の教材化

「安積疎水がなんのために作られたか」の追究では、あの広大な原野を切り開いた安積開拓をぬきにして考えることはできない。教材開発の視点から、疎水ができる前の人々のくらしと願いを把握させるために、「開成山地域の開拓」を、士族授産による安積開拓の苦労は「久留米士族の開墾」を選んで教材化した。そして、それらと疎水開さくとを関連づけて考察させ、広い視野から先人の苦心や努力を実感として把握させたい。

3) 単元の構成(表1)

4) 多面的学習活動の単元における位置づけ(表2)

5) 主体的に取り組ませるための課題の持たせ方と追究のさせ方

・課題の持たせ方

児童は、なにかに感動したり、矛盾や疑問を持ったとき問題意識を持つ。本単元では、開成山裏の第五分水路に通じる疎水路の見学と開成山史跡めぐり、安積疎水の分布図を見て疑問に思ったことを話し合わせた。中条政恒の記念碑、通水落成記念碑疎水路の位置をみて、中条が、開成山裏の疎水路を作ったと予想するものと、安積疎水全部を作ったと考えるものに別れた。学習問題は、「だれが、なんのために安積疎水を作ったのか」に落ち着いた。(表3)

6) 新教材「開成山地域の開拓」の展開のしかた(省略)

 

四 研究のまとめ

(一) 身近な地域から教材を選び、多面的な学習活動を効果的に取り入れ、具体的事業や事象を通して追究させた結果、事象の社会的意味を心や体でとらえるようになり、社会の時間を楽しみに待つ児童がふえてきた。

(二) 新教材の指導では、開成館、久留米公民館に資料が整っており、具体物を通して授業を進めることができた。

この二つの新教材と安積疎水の開さくとを関連づけて追究させた結果、郷土を開発した先人の働きを実感としてとらえるとともに郷土を大事にする心がめばえてきた。

 

表2 多面的学習活動の単元における位置づけ

 

表2 多面的学習活動の単元における位置づけ

 

表3 主体的に取り組ませるための指導過程

 

表3 主体的に取り組ませるための指導過程

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。