教育福島0055号(1980年(S55)10月)-036page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

Report

英語における「聞く・話す」の指導

福島県立若松商業高等学校教諭

桜井孝男

 

一 英語指導の目標

英語学習、英語指導の究極の目標は理解とその運用にあるが、多様化した生徒になにをどのように教えていけばよいかを考えるよりも、学習意欲をどう引き出すか、どう興味を持たせるかが当面の課題であるといえよう。日本にいるあるアメリカ人教師によれば英語をモノにしようと意欲的な生徒は二割程度で、大半は「目的がなく、仕方なしに授業を受けている感じだ」というが、そこに英語教育というか、高校教育全体の縮図を見る思いがする。こうした大半の生徒に成就感を抱かせ、やる気を起させるにはいかにすればよいかを考えるべきであるが、特効薬が存在するわけはなく、各々が試行錯誤の中にあるのではなかろうか。

現在の英語教育の主流は読解中心の入試英語である。入試英語が「目的がなく仕方なしに授業を受けている」生徒たちの頭上を素通りしていく様を体験しながら、思うことは英語教育という本道へなかなか出られないジレンマからの脱却を今こそせまられているのではあるまいかということである。入試英語の是非はさておくとして、アクティブイングリッシュに、いかに対応していくかが我々英語教師の課題であり、命題でもあるとともに、英語指導の目標でもあるはずである。

 

二 アプローチの変遷

読解から聴解へのアプローチは国内よりもむしろ英語を母国とするアメリ力において研究開発されてきた。伝統的なグラマティカルトランスレーションメソッドからフリーズのオーラルアプローチ、パーマーのオーラルメソッドを大きな潮流として、また国内においても実用英語をめぐる幾多の英語論争を経ながら、四十八年度改訂から五十七年度改訂へと、ゆったりではあるが、言語本来のアクティブなものへと進みつつあることは当然の流れかもしれない。改訂指導要領に見る究極の目標コミュニケイティブコンペタンスは我が国英語教育において陥没傾向にある「聞く」、「話す」をブラッシュアップしていくことにほかならない。

 

三 パッシブからアクティブへ

L・S・R・Wの四技能を平均的に、しかも各々を連携機能させて指導しなければならないことは十分承知しているわけであるが、様々の要因から「文字」を通しての英語に偏りがちである。しかしながら言語学習の本質を考えるとき、従来のパッシブなものからアクティブなものへと転換しなければならないのは当然である。L・Sの質、量を多くしていくためにはWの時間を相当思いきって割愛すべきであり、具体的には板書を少なくするとともに予習を徹底させ、ノートの活用が必要である。実際にアクティブの領域の授業をすすめていくためには教材に関する状況を大切にするとともにリーディングを補完的な位置づけにして、「聞く」ことに重点をおいてすすめていくのがよいと思う。究極的にはプロダクションを伸ばすように運んでいきたいものである。

 

四 生徒の興味・得意の領域

1) 興味の領域 S・L・R・W

2) 得意の領域 R・W・L・S

L・Sに興味、関心を示すのは予想されたことで、調査結果はそれを裏付けているわけであるが、興味がS.Lにあるのに現実には不得意という現象を呈しており、言語環境に恵まれないハンデはあるもののプロダクションの喜びを失なっているともいえるし、教師サイドから見ればおもしろさというかプロダクションの成就感を与えていないともいえる。しかし現実には読解中心の英語に安ど感すら求めてはいまいか。それがまた英語教育に生徒を引きとめておく一本の糸でもあるとするならば少なくともS・Lの比重をR・W領域の程度にまで引き上げていくことである。生徒の本来持っている英語学習意欲を大いに活用してこそ効果を上げうるであろうし、S・Lの領域を重視してこそ調和のとれた四技能が生かされるはずである。

 

五 L・Sを主体とした授業の展開

授業の内容を欲張らず、目標の明確化と言語材料の精選を心がけ、答えの内容についても欲張らないように配慮してプリントを作成し、L・Sに利用させる。次に授業をすすめていく際の注意を項目ごとに列挙したい。

2) テープを一回聞かせて前時の授業

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。