教育福島0056号(1980年(S55)11月)-021page

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随想

明日への希望

鈴木美智子

 

園児は、小学生と集団登園する。

 

園児は、小学生と集団登園する。

お兄ちゃん、お姉ちゃんに手をとられ、八時前にはほとんど園に来る。雨の日も傘をさし、カッパを着て、長靴をはいてくる。「先生、おはようございます」と元気な挨拶ができる。

二学期に入ると四歳児も、身のまわりのことは自分ででき、所持品の整理も上手になってきた。友達と朝の活動に入る。男児が多いクラスのため、遊びも活発である。活動範囲も広く、グループ行動も見られるようになった。遊戯室に入り、年長児と一緒に大型積み木、巧技台、トランプリンなど遊具を使って自由に遊んでいる。また戸外で固定遊具を使ったり、鬼ごっこや砂場での遊び、室内では絵本を見たり、折り紙を折ったり、自ら選んでそれぞれ楽しく活動をし大きい声を出して満足している。二、三名のグループをつくった女児が「先生、七ひきのこやぎをしよう」と言って、仲間をさそっている姿も見られる。

一学期中に正しい生活習慣を身につけさせ友達や幼稚園に関心を持ち、園生活の楽しさを味わいながらの生活を続けさせてきた。現在の子供は、すぐに怪我をする。新学期は特に多く、すり傷、切り傷、転んでも、すぐに手が出ないで顔をすりむく。つまずいては転ぶ、手足の弱い幼児が目立った。五月に入ってからは手足を鍛えるため、戸外活動を多く取り入れてみる。雨の降らない限り、三十分ぐらいは行ってきた。歩く、走るを基本に、フォークダンスや体操を組み合わせ、年長、年少との交流や、クラスを変えたりもした。また固定遊具を使う活動も取り入れてみた。身体を存分に動かし、活動が終わった後の水のおいしさ、汗を流した後のさわやかさ、いろいろと経験させることに気を配っての保育に努めてきた。七月になってからは、天気が悪かったが夏休みに入る前、プール遊びも数回行うことができた。子供たちの健康状態を確認し、四歳、五歳児一緒にプール遊びをさせる。小さいプールに百人以上も入るといも洗い同然、裸で遊んでも、幼児たちにはなんの抵抗もなかったが、次のプール使用からは水着を使うようにした。どの子も自発的に遊ぶことができた。今年はすずしい夏であったせいか、夏休みが終わった子供たちは「先生、もうプールに入れないね」「夏休みには海にも行かなかったよ」水遊びへのあこがれの会話も聞かれた。その時でないと経験できないことは多く体験させてあげたいと思う。良い環境の中で、のびのびと生活をさせてやることが私の願望である。

身長一メートルにもみたないで入園した幼児も多かった四歳児も、二学期に入ってからは、それぞれ二、三センチメートルは成長した。「さあ、今日もがんばろう」小さな子供たちの胸を大きくふくらませるために、それぞれの家庭環境を十分にふまえ、教師と幼児とのふれあいを大切にし、毎日の実践をつみ重ねることによって幼児の目は生き生きしてくる。ときにはやさしい母親にもなり、またときにはきびしい教師にもなり、子供の成長を喜び、自らも成長しなくてはと思う。「先生今日は、一寸法師のお話をしてね」四歳児の会話である。

以前に、ハンメルンの笛ふきの話をしてあげた。内容がむずかしいようにも思われたが意外と覚えていた。テレビの人形劇で見たあと、「次はこのようになるんだよ」友達同志の話が続いている。無垢な心を大切にし、子供の身になって考えてあげたい。限りない未来の夢を育てるため、幼児教育に情熱を持って前進したい。

(いわき市立四倉第一幼稚園主任教諭)

 

みんななかよし

みんななかよし

 

 

 


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