教育福島0056号(1980年(S55)11月)-026page

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わたしの研究実践

 

探究能力を育成する作業学習(理科)

福島市立岳陽中学校教諭

大室幹男

 

一 はじめに

 

科学技術は、月世界の探険はもとより、日常生活全般に深く入り込み、生活は科学技術で支えられているといえる。このような環境に育つ中学生に科学する能力と態度をしっかり身につけさせ、それを利用して自己実現を図り人間性を向上させていきたい。

そのためには、基礎的・基本的な科学概念と学び方の学習を重視した理科指導を行う必要があると考えている。

ところで、現在の理科学習は、自主的、主体的な探究学習をめざすことを基本としており、前述の目標と一致しているわけであるが、なかなか達成できない現状である。その原因として、生徒自ら探究することをねらった授業を計画しても、実際には、学力下位の生徒に対し十分な理解をさせないまま授業を進め、理科学習へ意欲を失わせたり、教師中心の教え込む授業になり易い傾向にあったことが考えられる。

そこで、これを改善し、個性や能力差に応じて、全員が自主的、主体的に探究でき、学習の充実感と喜びの味わえる指導法を目指し「作業学習」を取り上げ、研究実践してきた。

 

二 理科の作業学習

 

(一) 「作業学習とは『為すことによる学習』といえるが、単に生徒が教師の説明を聞き、指示された通りにするのではなく、子供が自ら実験し、仮説を検証したり、資料を作ったりするような授業をいう。」(「授業研究」五十三年十二月号、明治図書)

この考え方をもとにして研究実践を行った。

(二) この学習を進めるねらい

1) 学習の個別化を図り、かつ、具体的な事物と五感をフルに活用し、全生徒に、体験的に科学概念と学び方を身につけさせる。

2) 学力下位の生徒が学習に意欲的に参加できるよう指導の配慮を十分に行い、喜びと充実感を得させる。

(三) この学習を実施する際の留意点

1) 授業の一段階でも全員が、それぞれの個性・能力差に応じて資料を作ったり実験観察用具を準備して操作するなど、五感を通して創意工夫しながら自由に探究する場面を設定する。習熟するに従い、この学習の範囲を広め、自分で実験用具等を製作して探究するようにする。

2) この学習をすすめるに当たっては探究の過程はあまり重視せず、一人一人の生徒に自分なりに考えた探究法を一貫して実践させ学び方の習得を重視する。したがって、仮説の設定や実験観察結果から、論理的な結論の引き出しなどを重視するにしても教師の助言指導を加え、自由な探究活動に十分時間をかける。

3) 始めは、探究学習における一つの段階(応用的な段階)にこの作業学習を取り入れる。習熟するに従って多くの段階に広め、内容を深めるようにする。また、教えるべきことは教え、習熟させることは十分に習熟させ、作業学習へのレディネスを高めておく。

 

三 理科の作業学習の進め方(実践)

 

(一) 単元や小単元の指導構想をたてるために、教材の精選重点化を行い、基礎的・基本的な指導事項を選びだし、それを中心に、科学する能力・態度を考え一、二時間の指導時間に区切る。

(二) (一)の指導事項を解決するための最も基本的な実験観察等を選び、それを中心として授業を組織し指導案を作成した。この時、作業化する指導事項・教材を選び明示しておく。

(三) このときの作業学習は、探究の過程(考え→実践→結果→結果の検証)を一貫して含むものであり、生徒の実態に即したものとした。

【実践例1】二年「質量保存の法則」

過程内容省略

【実践例2】三年「電流と磁界」

アルミパイプの動き、コイルの作る磁界を学習した後、電流の流れている導線の囲りに、導線と平行に置いた安針の動きについて、統一的に説明するよう課題を提示し、用具を渡した。約二十分間、いろいろと個別に考え実験観察したのち八分間ほど班で話し合わせ、自分なりの考えをまとめさせた。その後、六人に黒板を利用させて発表させると、誤答や説明内容の不統一などで大論争となりながらも楽しい学習が展開できた。しかも、結果として正しい結論を出した。

 

 

 


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