教育福島0056号(1980年(S55)11月)-027page
作業学習に習熟させる過程では、このように結論との結びつきを筋道を立てて追求することを強制せず、楽しく、自然に学べる学習を多く取り入れ、興味関心と意欲を高めるよう工夫した。
【実践例3】一年「天体の動き」
地球上から見える星座は季節によりまた時刻により違うことを学習するのに当たり、教科書にのっている事実を教師自作の「感星運動モデル実験器」(図1・2・3)を用いて探究させる作業学習を実施した。これは、生徒が画用紙に星座図を書き、透明な板と回転できる円板をのせ、円板上に地球モデルを書いて操作し、抽象的な地球と星座の位置関係を具体的に表わせる簡単な教具である。
モデルの簡単な説明から生徒の能力に応じて参加できる作業と自分で作って探究する作業学習により、無理なく楽しく学べ、知識の定着もよかった。
四 作業学習の指導結果
この指導法は、まだ完成されたものではない。したがって、十分な結論は得ていないが、三年生「電流と磁界」の指導では、次のような結果が見られた。
(一) 実験群と統制群にわけ、学習後テストを実施し、その効果を調べたが実験群と統制群との間に有意差が認められ、この学習の効果が立証された。
(二) 作業学習実施後のテスト得点人数分布では、実験群の方が安定した曲線となり、中心から大きく良い方にずれていた。下位の生徒も向上している。
(三) プレ・ポストテストによる比較は定着度、科学的な思考力・応用力とも実験群の方が良い結果が見られ、中には、二倍以上も向上したものも見られた。
(四) 生徒の教材(電流と磁界)に対する関心度は、統制群の方が高かったのに、実施後の理解度、意識は実験群の方が二倍以上も高くなっていた。これは作業学習の方が学習の充実感をみたしてくれるからだと思われる。
(五) 学習時における生徒の態度等の変容は、実験群の方がよく発表し、積極的に活動していた。学力下位の生徒も実験観察によく参加していた。
(六) 作業学習の主な効果は、次のようにまとめることができる。
1) 生徒一人一人に自主的・主体的に自然を探究する意欲が育つ。
2) 問題を解決するための方法を生徒の能力に応じて発見し探究の能力が高まる。
3) 生徒の能力に応じて理解度が高まり、知識が的確に定着する。
4) 問題解決への喜びと充実感を与えることができる。
五 おわりに
作業学習はある程度総合的な学習となり、訓練期間が長くなることや、積極的に学ぶ生徒の態度が必要でありこれをどのように涵養するかが問題点としてあげられる。課題解決のための実践研究をすすめていきたい。
画用紙で作り、一番下におく。
1 星座位置図
2 断面図
惑星運動モデル実験器
画用紙に星座位置を書き、その上にモデル実験台をのせ手で動かしながら読み取る
3 モデル完成図