教育福島0057号(1980年(S55)12月)-024page

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随想

あれから半年

黒澤千賀子

 

か不安でした。反面やればなんとかできるだろうと楽観的にも考えていました。

 

はやいもので新任教員として三年生を受け持ち、もう半年が過ぎてしまいました。今年の三月に任地校が石川町立野木沢小学校と決まったとき、石川町はどんな所だろうか、どんな子供たちがいるだろうかとあれこれ考え、落ち着いていられない気持ちでした。また、うまくやっていけるかどうか不安でした。反面やればなんとかできるだろうと楽観的にも考えていました。

四月の着任式で初めて子供たちを目の前にして、胸はどきどき足はがくがくと震えがとまりませんでした。三年生は全部で三十三人、腕白盛りでそのうえ、男子が二十人もいる学級で、その元気のよさには初めから圧倒されてしまいました。これから一人で三十三人を相手にしっかりやらなければならないと思うと、責任の重大さを感じました。本当にがんばらなくてはいけないと思いました。

初めのころは、まだ慣れていないせいか、とまどうことが多く、気ばかりあせっていました。まだ自分に自信がないため、子供にこんなことを言っていいのか、こんなことをしていいのか不安で遠慮がちだったためか、授業をしていても子供たちは話を聞いてくれず、おしゃべりばかりしていました。また、教材研究不足でつまずきながらのため余計にそうなるようでした。おしゃべりばかりで話すことがなくならないのかと思うほどでした。わたしはなんとか静かにさせたいと必死になってしまい、子供に負けまいと大声でどなってばかりいる日が続きました。しかし、子供たちのおしゃべりは、ますます多くなり、時にはわたしに反発するありさまで、失敗ばかりの連続でした。自分がこんなに一生懸命やっているのにどうして分かってくれないのだろうと思うととてもくやしい気持ちになりました。とにかく落ち着いて勉強する雰囲気でなく、どんどん遅れていくので大変焦りました。しかし研修会などの話や友達の話を開くと、わたしだけでなくみんな同じことで悩んでいるということが分かり、少し安心した気持ちになることができました。仲間作りや班活動を工夫したり、目標をはっきりさせ、主体的に取り組めるようにむけたりするなどしてみました。時には静かになるまで話をしないで待っていることもやりました。しかし一時的には静かになっても、長続きせず、根負けしてしまいそうになることが多い状態で一学期が過ぎてしまいました。

夏休みが終わり二学期が始まると、あんなに多かったおしゃべりも少なくなり、子供たちも落ち着いてきました。学習に取り組む姿にも意欲が感じられるようになりました。みんなに迷惑をかけ、自分も人の話が聞けず後で困るんだということに気づき、自分から取り組もうとする気持ちも高まってきたためかと思います。むだ話をする友達がいると注意しあい、自分たちから進んで静かにするようになりました。

かなりよくなってきたとはいえ、わたしを悩ましてきた子供たちですが、しかられてもすぐまた「先生」といろいろ話をしにくるので、本当に素直でかわいいとも思います。さっきあんなにしかってしまい気の毒だったと思うことがたびたびです。また、授業をしていて子供が分かったとうなずいてくれるときや、力いっぱい活動し、あるいは苦労してやりとげて喜ぶ子供の姿を見るときなど、大変うれしく思います。どちらかといえば、喜びよりも悩みの方が多い毎日ですが、しっかりと責任を果たし、期待にこたえられるよう努力していきたいと思います。

(石川町立野木沢小学校教諭)

 

意欲をもって

 

意欲をもって

 

 

 


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