教育福島0058号(1981年(S56)01月)-024page

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養護教育の交流推進

 

特集

 

一 はじめに

昭和四十四年、特殊教育総合研究調査協力者会議がまとめた「特殊教育の基本的な施策のあり方について(報告)」において、養護教育の改善充実のための基本的な考え方として「普通児とともに教育を受ける機会を多くすること」という一項を掲げている。

昭和四十五・六年の特殊教育教育課程研究指定校の指定を受けた静岡盲学校の交流教育をテーマとした実践研究は、この報告の趣旨を受けた先導的試行といえよう。こうした動きが、昭和四十六年三月に公示された旧特殊教育諸学校学習指導要領第四章特別活動に「経験を広め、社会性を養い、好ましい人間関係を育てるため、小中学校の児童生徒と活動を共にする機会を積極的に設けることが望ましい」という交流の必要を明記する上で力となった。

その後、約十年の実践経過から、養護教育側から一般小中学校への交流の思い入れだけでは、片思い的交流にとどまり、双方的交流の発展が望めないことがはっきりしてきた。文部省ではそこで、昭和五十四年から二年継続指定として、各県の小中学校を対象に、心身障害児理解推進校指定事業を開始した。

本県では、福島第四小学校と郡山第二中学校が指定を受け実践してきた。さきごろ、両校とも実践報告会を実施したので、その概要をここに掲載し、後続の実践校等の参考に供したい。

 

二 交流教育について

特殊教育諸学校にかかる旧指導要領の交流に関する部分の文言が、新指導要領では、第一章総則第二教育課程一般に移された。特別活動から総則への移動は、交流教育の一層の重視を意味する。さらに、新指導要領の公示直後の昭和五十四年七月六日付けの「学校教育法施行規則の一部を改正する省令の制定及び特殊教育諸学校の学習指導要領の全部を改正する告示の公示について」(次官通達)において、次のような要請を行っている。

 

新小学部・中学部学習指導要領及び新高等部学習指導要領において、児童生徒の経験を広め、社会性を養い、好ましい人間関係を育てるため、学校の教育活動の全体を通じて小学校、中学校及び高等学校の児童生徒及び地域社会の人々と活動を共にする機会を積極的に設けるように一層配慮する必要があることが示されましたが、小学校、中学校及び高等学校においてもこの趣旨を十分理解し、適切な教育活動が展開されるよう関係機関への指導について、格段の御配慮を願います。

 

望ましい交流は、双方に積極的、能動的な機運がおこり、お互いの相手校の選択が一致する状況を基盤とするのだろうが、それが現実のものとなるのは、まだまだ先きのことであろう。

本県では、文部省の理解推進事業とは別に、養護教育交流推進事業を実施してきている。この二年間で、盲、聾、養護学校七校と小中学校各六校とのあいだで、交歓会、合同野外活動を展開してきている。今後も計画にそって順次すすめることとしているが指定の年度だけの交流に終わらないで継続した実践がなされるよう望まれる。

なお、交流教育は、盲、聾、養護学校と小中学校との間だけで行われるものではない。軽度心身障害児の場合、小中学校における通常の学級と特殊学級との交流という形態がある。これはすでに多くの学校で実施されているが特に、精神薄弱特殊学級の場合、国語や算数・数学の時間以外はすべて通常の学級で学習させるといった安易かつ極端な方法を交流教育とする考えは是認できない。すなわち学教法施行規則第二十六条(履習困難な教科の学習)及び第五十五条(準用規定)を適用しても通常の学級では学習が困難と認められる精神薄弱児を学教法第七十五条に定める特殊学級において、同法施行規則第七十五条の十八により特別の教育課程を編成して教育を行っているのである。精神薄弱特殊学級が、各教科の学習を通常の学級との交流で行うのは、極めて困難であり、教師間の交流を図るなどの工夫、努力を優先させ、児童生徒相互の交流は、特別活動を中心に実施するのが妥当と考えられる。

 

 

 


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