教育福島0061号(1981年(S56)06月)-006page

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演劇をどうぞ

 

劇団手織座

 

貫恒実

 

筆者紹介

 

筆者紹介

演出家。日本大学芸術学部演劇学科卒業。劇団手織座(宝生あやこ代表)で、演出を担当。「哀しきは」の演出により、第三十四回芸術祭賞芸術祭優秀賞を受賞(昭和五十四年)した。その他の主な演出は、「ふるさとの詩」、また、文化庁主催による昭和五十六年度移動芸術祭巡回公演(春季)に選定された「楢山節考」などがある。

吉野せい原作の「漢をたらした神」の演出も受け持ち、福島県をはじめ、全国各地で好評を博したのは記憶にあたらしいところである。

演劇を学校教育の課題に入れようという話があるようです。演劇を仕事としている者にとっても、このことは興味のある出来事です。

演劇は、一つの社会を形成しますから、そこでの人間関係は生活するあらゆる立場を備えて、そこで喜び苦しみながら生きていく人間像を表出していきます。つまり具体的に人間を知る仕事ですからなんとも人間的です。

演劇は多くの場合、戯曲というあらかじめ用意された環境から出発しますから、どの戯曲を選ぶかで効果は複雑ですが、評価を得た優れた戯曲は豊富です。しかも人間探求の上から、それぞれ十分に魅力的なはずです。

文部省の意向については知りませんが、私個人の体験から推しても、演劇の効用については抜群のものがあると思います。しかし、現場では演劇とはなにかという定義づけや知識として知るよりも、実践を通して人間を識り、自己を開発していくという人間関係をつくりだすべきだと思います。

生きた日常性のなかから発見していく、声を出し、身体を動かして人間の心を知覚していく、人間観察へ眼と心を向けていく。反社会的と思える設定に対してもこれを我がこととして吟味していくことで人間の真実がわかってくるはずです。

 

 

 


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