教育福島0061号(1981年(S56)06月)-010page

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伸ばし、どのように指導するかというためで、両者を切り離すことができない。指導を切り離しては真の理解は成立し得ないし、理解なしに有効な指導も成立し得ない。

理解しながら指導し、指導をしながら理解を深めるという流れの積み重ねによって、生徒指導の充実が図られていくのである。

 

2 生徒理解のための具体的な配慮

 

教師は、毎日のように児童生徒に接しているため、かえって固定的な見方になれてしまい、児童生徒の新しい成長や変化に気が付かない場合が少なくない。

また、個々の教師の生徒理解への努力にも限界がある。この限界を補うためにも、全教師の協力の下に、組織的計画的に生徒理解の深化を図っていくことが必要である。

次に、そのための方策と配慮すべき事項について述べてみよう。

 

(1) 児童生徒との人間的な触れ合いを深めるとともに、教師間の協力体制を確立すること

 

児童生徒一人一人の理解は、平素からの人間的な触れ合いや観察を通して深められる。

教師と児童生徒の間に内面的、人格的つながりがないところでは、観察による生徒理解も表面的なものにとどまらざるを得ないであろう。

したがって、学校生活の全体において、児童生徒との人間的な触れ合いを大切にし、教師と児童生徒の好ましい人間関係の確立に努めることが、生徒理解の出発点である。また、教科指導も教師と児童生徒との信頼関係を確立し、好ましい人間関係を育くむ重要な場であることを認識すべきであろう。

同時に、教師間の人間関係を基盤として、全教師が協力し、継続的、計画的に生徒の観察を進めていく体制を作る必要がある。

一人一人の児童生徒と最も密接なつながりをもっているのは学級担任であるが、この担任の教師が独力で児童生徒のあらゆる面を十分に理解することは不可能である。したがって関係の深い教師の協力を広く求めて児童一人一人の全体像を正しく理解できるようにしなければならない。このため、学級担任は、学年主任、生徒指導主事(主任)、教科担任、クラブ活動担当者や養護教諭と絶えず連絡をとり、それぞれの意見や資料を参考にしながら、次の指導に生かしていくことが望まれる。

また、各学校で生徒指導部会、学年会、事例研究会などの持ち方を検討し生徒の状況について相互に話し合い、連絡し合うための場と方法を設定する必要がある。

 

(2)調査や検査を計画的に実施し、指導に生かすこと

 

生徒理解は、児童生徒との人間的な触れ合いや観察を通して深めていくことが基本であるとしても、教師の見方には、主観的なゆがみや偏りが入りやすいのも事実である。

触れ合いや観察から得た印象の正しさを確かめたり、ゆがみを是正したりするためにも、調査・検査などの客観的な資料を活用することが望まれる。このため、児童生徒の発達段階や行動傾向、地域や学校の実態などを考慮の上、適切な計画の下に調査・検査を実施することが望まれる。

例えば、九月から十月にかけては夏季休業中の様々な経験が児童生徒の生活や感情に影響を及ぼし、学校生活への不適応が生じやすい時期でもある。友人関係の調査や学習への適応性の検査の結果などを参考にしながら、生徒指導の方針を検討してみることなどが考えられる。

もちろん、調査・検査は、いたずらに数多く実施するよりも、精選して実施するようにし、その結果を個々の児童生徒の指導に生かす必要がある。

 

(3) 家庭や地域社会と密接な連携を図ること

 

児童生徒の実態を総合的に把握し適切な指導の方針を立てるためには家庭や地域社会での児童生徒の生活の状況を把握しておく必要がある。

学校としては、PTAの会合や家庭訪問などの機会を生かして、学校における児童生徒の状況や指導の方針を理解してもらうとともに、家庭における児童生徒の状況、指導上の悩みや不安、学校の指導に対する要望などを十分に聞く必要がある。

このことによって、教師と父母との間の生徒理解のずれを補正し合い、相互の不足部分を補い合うこととが可能となり、協力して指導に当たることが可能となるであろう。また、青少年健全育成の団体、青少年補導関係の機関などとの連携を図り、校外における自校の児童生徒の実態について十分に把握しておくことも、生徒理解の深化を図る上で大切なことである。

 

(4) 児童生徒の資料の整理や保管の仕方を工夫し、活用に努めること

生徒理解のための資料は、面接や観察の記録、調査・検査の結果、作文や作品などを合わせると、年間相当の量に達するであろう。

これらを有効に活用するためには整理や保管の仕方に工夫を加える必要がある。特に、個人別の指導票にまとめ、累加的、継続的に利用できるようにすることが望まれる。また整理箱を準備し、学年別、学級別、更に個人別にファイルを作り、個人の各資料を一括してまとめるようにすることも望まれる。

 

 

 

 

 


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