教育福島0061号(1981年(S56)06月)-011page
二 共通理解の深化
1 望ましい共通理解の必要性
よく言われる共通理解とは、どのような意味をもち、生徒指導の実践を推進する上でどのように考えればよいのかについて理解しておく必要がある。
まず、基本的なこととして、学級担任の教師が創意工夫に富んだ指導を進めていくことが大切であるが、学校全体の中で学級や自己の位置付けを心得あくまでも学校の教育目標のねらいに沿った指導を進めなくてはならない。
いわゆる学級王国的な考え方から学級内の秘密ということにとらわれ、広い視野でものを見ることを忘れがちになるが、校内における共通の歩調に配慮して指導を進めることが望まれる。
学校や学年で決定した指導の方針やそれに沿った具体的な指導の進め方については、厳守することが大切である。
もし、この足並みが乱れるとすれば学年経営、ひいては学校全体の運営が崩れるていくおそれがあろう。
2 共通理解を深めるための基本的な考え方
(1)全教師が学校教育の公共性についての認識を深めること
学校は、公教育という立場で児童生徒を預かり教育を進める場である。
したがって、教育は、法令等で定める教育課程の基準に従って行われることはもちろんであるが、各教師が常に児童生徒や地域社会の実態、更には父母の願いを踏まえて指導すあたることが大切である。
生徒指導においても、全教師の協力によって生徒を育成すること、そのためには生徒指導の目標を明確にすることなどを共通に理解しておくことが教育の公共性の観点から重要である。
(2)教師相互の人間関係の円滑化を図ること
全校が一体となって生徒指導を効果的に進めるためには、全教師のまとまりを強化することが大切である。
全教師が相互に敬愛しながら、また教師の一人一人が長所や特技を生かすことができるように意図的、積極的に心掛けることが大切であろう。
全員が信頼感によって結ばれ、一体となって動き、感じたことを卒直に話し合うことができるような人間関係が基盤となって、はじめて生徒指導の成果が期待されるのである。
(3) 他の教師の指導の在り方について理解すること
生徒指導に関する指導の成果は、短期間に目に見えて顕著な成果が上がるとは限らない。例えば、教育相談などを続ける場合には、時間がかかることも多い。
また、一人の教師が時間をかけて熱心に指導に取り組んでいるような場合には、はたから見れば、手ぬるい指導であるという批判的な見方が生じやすい。このような周囲の態度が出てくれば、その教師はここでやる気をなくしてしまうことにもなりかねないであろう。
また、生徒指導上の緊急な事態が発生すると、応急の措置には多くの関心を払うが、事後の評価は怠りがちである。
このようなことも、教師間の意識の差につながりやすい。
たとえ、結果がはかばかしくなくても、その教師の指導の過程を評価し、周囲からその教師を力づけるような姿勢が望まれる。
3 共通理解を深める機会と方法
(1) 児童生徒、家庭、地域の実態分析の機会を生かすこと
児童生徒、家庭、地域などの実態を理解することは、生徒指導の重点方針や具体的な推進の在り方を決めていく上での重要なことである。この方法としては、調査などがあり、重要な方法とて欠かすことができない。これに加えて、教師による観察や児童生徒や父母との話し合いなどによって耳から入る情報や目で見る実態があげられる。
この方法は、非科学的であると批判されることもあるが、生徒指導上の有効な方法である。客観的な調査などのほかに、このような日常から生徒の行動を見詰める態度を重視し更に教師間の情報や意見の交換の機会を設けることにより、全教師の生徒指導についての意識の向上が望めることにもなると思われる。
(2) 生徒指導の重点方針の策定の機会を重視すること
実態がつかめたならば、その学校で生徒指導上どのような点が最も重要な課題であるかを理解し、全教師の認識を深める必要がある。
この過程において、全教師の統一した理解が得られるようにし、その実践に当たっては、全校で統一した指導が進められるように共通理解を図っていくことが大切である。
(3) 指導の分担と協力の過程を重視すること
全教師が共通理解の下に、すべて同じ歩調で生徒指導を進めることは非常に困難であり、そのことだけを求めるとすれば、労多くして益少ないとも言えよう。むしろ、一つの指導方針を具体的に進める際に、教師がそれぞれの役割の分担をした方が効果的であり、良い結果を生むことが多い。
同時に、実際の場面において教師一人一人がそれぞれ分担するという形で責任をもって仕事をし、一つのねらいを達成していくようにすることによっ