教育福島0061号(1981年(S56)06月)-028page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

わたしの研究実践

 

「農業教科」専攻実習の意義と指導法の改善

 

福島県立岩瀬農業高等学校教諭

 

生方和廣

 

めまぐるしく変化する農業情勢の中で、農業後継者育成という大きな使命を持つ農業教育は、ややもすると低迷を隠しきれない感がする今日、私たち農業教員は教科指導の中でいったい何が今日的な課題で、何が本質的に重要なことかについて再認識し、アクセントある指導が必要ではないかと思われる。それは難しい理論ではなく、学習活動の中で生徒が農業の一分野でもよいから「好きになる、興味を持つ」ということではなかろうか。古くて新しい言葉であろうが教育の本質であり今日的な課題であるように思われる。

このよらな考え方のもとに今回農業教科の中の「総合実習」について、特に三年次における「専攻実習」の考え方と指導法の工夫について述べてみたいと思う。特に、総合実習のあり方については、教師の創意工夫の幅が大きく、今、問題となっている生徒の多様化傾向ともからんで、非常に研究する余地が大きいと思われるからである。

 

一 専攻実習とは

 

総合実習の学年別進行について簡単に触れてみると、一年次においては幅広く農業体験をするとともに、スクールプロジェクト学習を通して生物としての生命体に感動させ、なすことによって学ぶことを主眼としている。二年次においては座学による知識と実際を結びつけ作物個々の栽培法を習得すること、三年次においては研究テーマを設定し系統的に学習することを主眼としている。特に三年次における専攻実習が一、二年のそれと大きく違う点は年間を通して自分が希望する部門を専攻し、テーマに基づき主体的に継続的に実践する点にある。この専攻実習は三年間の総まとめでもあり、生徒の「興味」と「やる気」を呼びおこす絶好の場でもあるので、私は毎年特に力点を置いて実践してきたつもりである。その考え方と方法について実践報告をしてみたい。

 

二 専攻実習の意義

 

1) 体験を通しての知識理解と実践力を培うことを目的としているので、能力差にもかかわらず、より具体的な事象でもって基礎的事項の定着を図ることができる。

2) 一つの作物を追究することにより

他の作物への応用力が養える。

3) 総合的に座学で学んだ知識を組み立てることができる。

4) 個別指導の徹底ができる。

5) 意欲と目的意識を持たせることができる。

このような意義が実際の指導の中で感じられるが、生徒の実態は年ごとに多様化傾向が強まり指導の難かしさが感じられるようになってきている。

 

三 生徒の実態(その部門を専攻した理由)

 

1) 将来の農業経営に意欲的で、その部門を専攻した生徒

2) 将来の農業経営にあまり意欲的ではないが、我が家の経営に関係があるのでその部門を専攻した生徒

3) 将来就職するので直接関係はないが、その部門の学習を楽しみたいので専攻した生徒

4) 興味はないが、なんとなくその部門を専攻した生徒

 

四 指導法の改善

 

自営率が減少している現在、生徒の多様化とともに指導の難しさが感じられる。そのような中で専攻実習の意義をかみしめて教育効果を上げるにはどうしたら良いか、原点に帰って次の三つの事柄について考えてみた。

1) 教育環境

・農場の作物が順調に生育していて、その場に入っただけでやる気がでてくるように整備されているかどうか。

2) 人間関係

・教師と生徒の関係は、教師がくると厳しくやる気をおこすような関係が日ごろからできているかどうか。

・生徒間の人間関係では、グルー

・フ編成をする場合重要である。生徒の中に溶け込み人間関係を把握しているかどうか。

3) 指導法

・個別指導の徹底、自主的参画の助長が図られているかどうか。

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。