教育福島0061号(1981年(S56)06月)-029page

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以上三点が重要であるが一番重要な指導法について今回述べていきたい。

 

五 専攻実習の実践例(留意点)

 

(1) 研究テーマの設定

・家庭の農家経営の実態の把握

・興味についての把握

・個人面談による決定

・学校農場で実施が可能かどうかの検討

・作付期間と学習期間が一致するかどうかの検討

(2) 学習法

・プロジェクト学習法による自ら進んでする学習

(3) グループ編成

・生徒間の人間関係の把握

・リーダーの存在

・テーマ、規模による適正な人数

・農家経営、栽培技術、出身地等を考慮

(4) 指導計画(下表の通り)

(5)学習展開の留意点

実施時間は週三時間であるため、時間内にすべて終了することは困難である。少ない時間内に効果的に学習させるためには1)生育調査を行い一週間にどのくらい作物が変化したかを知る。2)農場に栽培のポイントを書いたポスターを掲示する。3)資料を配布し内容について理解を深めさせる。4)実習ノートを作成し、実習の内容、調査研究データーについて記録させ毎時間検閲する。また学習意欲を失わせないためには1)教師自ら新鮮な気持ちで生徒に接するよう常に学習に心がける。2)実験を決して失敗させないように援助する。3)家庭の状況などを把握し生徒に目をかけ愛情をそそぐ。また興味関心を呼びおこすよう常に試験区に目をそそぎ「どうだこれは」などと発問し、生命現象の神秘に触れさせる。また個別指導の徹底を図るよう、きめ細かな指導をして能力の低い生徒にも水準を引き上げるよう努力する。

(6) 専攻実習による研究のまとめ

一年間かけて行った実験は卒業論文としてまとめさせ、評価する。またよくまとまったものについては、農業クラブの研究発表大会に出場させ自信をつけさせる。

 

六 最後に

 

反省点は数多くあるが、専攻実習の成否のポイントは生徒一人一人がどれだけ成就感を味わったかに目やすを置いている。成就感、達成の喜びを味わうということは「興味」を感ずることであり、今日的な課題に一歩近づいたことになる。自主的プロジェクト活動を通して成就感を満足させ、意気に感じ、農業に「興味、関心」を覚えさせることはとりもなおさず自営率の向上につながるものと信じて疑わない。

数年前、静岡県のある学校を視察したとき驚いたことがある。

多くの生徒が放課後、自分のプロジェクト圃場の中で黙々と実践しているではないか。それも明るくひたすらにである。その意欲には心打たれた。このように生徒を育てた教師と指導組織にただ頭が下がる思いがした。生徒が生き生きと土とともに学ぶ姿こそ我々の願いである。私はこのプロジェクト学習を手がけて数年を経過するが、専攻学習の成果である農業クラブ主催の研究発表大会用のスライド集が、ぶ厚く集まるのを楽しみにしている。

 

(指導計画  園芸教科におけるプロジェクト学習の例

 

 

 

 


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