教育福島0062号(1981年(S56)07月)-028page

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わたしの研究実践

 

「進路の手引」発行のために

 

福島県立小高工業高等学校教諭

杉山金一

 

一 はじめに

 

本校では、進路指導のために、機会あるごとに各種のプリントを発行し、また、生徒及び父兄の啓蒙用に月一回「進路だより」を作成発行してきた。これらの小さな努力は、その時々には効果的な役割りをそれぞれ果たしてきておりへそれなりの意味を持っていた。しかしながら、'必要に応じて作成する個々の指導資料としては有益であっても、進路指導全体の中における位置づけが明確でなく、体系的に編成する必要にせまられていた。

また、進路指導が結果的に高学年にかたよりがちであることへの反省もあり、これを一年時より計画的に指導するためには、一貫した指導資料の必要性が痛感されていた。担任教師の中には、進路指導のベテラン教師がいるが、また一方では、初めてクラス担任となった若い教師もあり、教師の一致した足並みを進路指導のうえに期待することは、現実問題としてなかなか困難である。しかし、統一した資料を用いることにより、この点での不揃えをかなりの程度補うことが可能であろうと考える。

生徒の教材としては市販の「進路ノート」等かなり工夫されたものが刊行されている。これらのうちのいくつかは、内容も充実しており、資料もまた豊富でロングホームルームでもかなり利用されている。しかし、本校生の具体的な進路との結びつきという点から考えた場合、個々の会社や職業イメージの把握ということについては、既製のデータはあまりにも本県あるいは本校の実情にそぐわないものが多い。生徒が進路を自らのものとして身近に感じるためには、本校の進路の実態を示すデータや事実が必要である。ロングホームルームの進路のための教材として、三年間進路の指針となり得る教材の出現がまたれていた。

 

二 手引発行の意味

 

・進路指導の現実の問題を掘り下げることにより、本質的理念に到達したい。

文部省発行の進路指導の手引によれば、進路指導の基本理念として次の事柄が挙げられている。

○生徒の個人資料、進路情報、啓発的経験及び相談を通じて生徒が自ら、将来の進路の選択や計画をし、就職または進学して、更にその後の生活によりよく適応し、進歩する能力を伸長するように、教師が組織的、継続的に指導、援助する過程である。

○進路指導の本質は、卒業時の進学や就職のあっぜんではない。

○人間としての望ましい生き方を自覚させ、将来の生活において自己実現する能力を育てることにある。

○ある学年になって突如として行われるのではなく、長期にわたり累積的に育成されていくものである。

 

こうした進路指導についての基本的考え方が関係者の間に認識されて久しい。しかし、理念は承知していても、現場の教師がそれを仕事にどう結びつけているかは、別問題であるようで、理念が理想を高く求めれば求めるほど、現実は必ずしもそれと一致しない次元で行われることになり易いのではなかろうか。進路指導の成果は、就職進学の成果によってのみ校内外から評価されがちであるという現実は無視しえないが、生徒一人一人の遠い未来に思いを馳せるとともに、目前の生徒への対応を考えるとき、そこに何らかの接点を求める必要性が生じてくる訳である。今回の「進路の手引」は、この意味で現実の進路指導を一歩でも理想に近づけるねらいを持っている。

 

三 「進路の手引」の構成

 

この手引の構成は、次のとおりである。

1 職業の意義と心がまえ

2 進路選択の手順

1)自分自身を知る。

2)職業に関する知識を集める。

3)自分自身のイメージと職業との関係を検討する。

4)求人情報(進学情報)により最

 

 

 


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