教育福島0062号(1981年(S56)07月)-038page

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楽しさいっぱい食堂給食

 

−南会津教育事務所−

 

校と、軒を並べる鉄筋三階建の白亜の殿堂が伊南村学校給食センターである。

 

樹齢七百年余、県下随一の老樹として、天然記念物に指定されている伊南のシンボル大銀杏を、まのあたりに仰ぐ伊南小学校と、軒を並べる鉄筋三階建の白亜の殿堂が伊南村学校給食センターである。

総工費一億四千数百万円、近代設備を誇る共同調理場もさることながら、参観者の眼を見はらせるのは、三百三平方メートルの面積をもつ大食堂である。内装は白とベージュの縞模様のソフトな色調、大きなサッシのガラス窓、窓外にひらける美しい自然の景観、明るさと清潔さをモットーとする学校給食の場にふさわしい環境である。

学校に食堂が欲しいという希望は全国津々浦々にあるが、ばく大な経費を必要とするこの事業は、実現が容易ではない。こうした中で伊南村は、第三期山村振興計画に学校給食センター整備事業を計画し、従来の給食室を解体して、五十五年十二月に実現させ、給食を開始したことは、学校教育に対する伊南村民の熱意のほどがうかがえる。

午前十一時五十分、一階の調理場で調理されたものは、リフトによって二階の食堂に運ばれる。白い帽子、白いエプロンに身を包み、手を洗い清めた当番児童のあやつるワゴン車によって食かんが配られ、配膳、もりつけの作業が手ぎわよく進められ、広い食堂はたちまちごちそうの香に満ちてくる。

十一時十五分のチャイムで全校児童一斎に給食の服装を身につけ、手をきれいに洗って整列する。この間に服装点検や衛生検査が行われる。その後、整然と食堂に入場し所定の席につく。「きょうの給食はどんなごちそうかなあ」−期待感に児童の瞳はいきいきと輝いている。

楽しい食事を通して望ましい食習慣の形成と、好ましい人間関係の育成を図るため、現在はグループ給食形式をとっている。食卓ごとに学年たてわりの班が編成され、そこには教師も配置されて協力・責任・感謝の心情を自然のうちに培っている。児童は、担当教師から食事の際のあいさつのしかた、箸の正しい持ち方、食事の姿勢にいたるまで、よりよい食事のマナーを体得するよう指導される。

童謡、民謡などの楽しい音楽が流れる食堂で、二百九名の児童がルールを守り、自由な語らいを交しながら教師と共に楽しく食事をする。一人一人の児童に対する食事の量の配慮、体調のよくない児童に対するまわりの児童の心づかい、嫌いなものも少しずつ食べるようにしむける配慮、低学年児童に対する高学年児童の思いやりなど、児童相互の人間関係、児童と教師のふれあいが望ましい場を構成している。

給食後は、生徒指導の場として利用されることもある。計画的な指導のほかに時に応じた指導も行われ、学級における指導とあいまって効果をあげている。

学校給食の目標には「日常生活における食事について、正しい理解と望ましい習慣を養うこと」とあり、更に、「学校生活を豊かにし、明るい社交性を養うこと」がうたわれている。

また、学校給食は「なすことによって学ぶ」実践活動であり、総合教育の場と考えられる。伊南小学校の食堂方式による学校給食はこれらの目標実現に望ましい方向づけがなされ、学校生活を一層楽しいものにし、全人格的陶冶の場として、学校教育に果たす役割りはきわめて大きいものがあると思われる。

 

みんなで食べるおいしい昼食

みんなで食べるおいしい昼食

 

 

 


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