教育福島0063号(1981年(S56)08月)-006page

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豊かな自然

−温かい心づかいを求めて

福島県自然保護協会長 星 一彰

 

筆者紹介

 

筆者紹介

昭和八年生。福島県自然保護協会長。会津高等学校、県農業短大、福島高等学校を経て、現在は福島東高等学校教諭。県尾瀬保護指導委員、県自然環境保全審議会委員、全国自然保護連合理事、日本自然保護協会評議員、環境庁自然公園指導員など自然保護にかかわる団体の要職についている。

自然保護運動の推進に尽力する一方、動植物の生態等の研究にも熱心で、尾瀬のハッチョウトンボの研究では第一人者である。特に、尾瀬ハッチョウトンボの行動を調査し、そのテリトリーをはっきりさせたことは有名である。

 

美しい郷土とは、豊かな自然があり、そこに生きる人間の温かい関係と、伝統ある文化が存在することであろう。文化によって培われた自然は、人間の古里であり、人材も育成される。自然は人間のエネルギーの源泉である。

自然のとらえ方として、「生態系」という考え方がある。そこでは生産者(光合成を行う緑の植物)と消費者(生産者を食べる動物)、そして分解者(生産者、消費者の排出物や遺体を分解する微生物)と密接な関係を保ちながら全体として調和している。

自然保護とは、この生態系を保護することであり、終局的には、自然資源の賢明な利用法、人類の保護ということになる。

日本では、大都市における光化学スモッグ発生が契機となり、自然保護問題が急にクローズアップされるようになってきた。そして、最近では環境権の問題さえ発生するようになった。

公害などは、生態系の機能と構造を理解しないことや自然と人間の関係を理解しないこと、また人間の自然環境への働きかけ方の誤りから起こっている。しかし、公害対策は一種の対症療法であり、どうしても先取りした自然保護思想を高めなければならない。

日本の戦前の理科教育などには、生態系概念が欠落し、自然保護思想を高める効果が少なかった。

 

 

 


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