教育福島0064号(1981年(S56)09月)-026page

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随想

 

子どもとともに

 

新保扶美

 

新保扶美

 

子供たちも年長児として、幼稚園生活もすっかり板につき、一つ一つ説明をしなくとも自分たちで考え行動ができるようになりました。反面遊びの中で少々ゆきすぎでは、と思える行動もみられます。昨年の四月、二年保育年少児担任として、不安な出発をしました。三年間の保育経験はありましたがその後七年間のブランクは、全くゼロからの出発でした。でも不安がってばかりはいられません。子供たちにとっては、初めての集団生活です。入園式を終えた日から、忘れかけていたものをたどたどしく思い出し、先輩の先生のアドバイスを受けて、その場その時を夢中で接しました。とにかく子供たちが、喜んで登園してくれることのみを願っていました。登園時にグズる子供がいると、自分の未熟さに対する反応の一つでは、といろいろ思いうかべ反省しました。子供と私はお互いに、一歩一歩肩を並べて歩んできました。本当に一緒に歩み、考え、とまどい、やっとここまでこれたと痛感させられます。

それから一年、年長児になった子供たちは友達関係も深まり仲間意識も強くなって、体調の悪い友達に対しては「だいじょうぶ」「かわいそうね」などと、やさしく言葉をかけ、早退する友達に手を貸してやるなど、思いやりがみられるまでになりました。何かを発見すると、息咳切って報告し、それに皆が集まってワイワイガヤガヤ話が進む。本を出し調べ出す。それらについての知識を少しずつ広げて、そして再びワイワイ話が進む。一人一人が言いたいことを、思いきり言っている。目が輝き、すばらしくいい顔をしています。ワンパクも泣き虫も、実にいい顔をしています。

自然に恵まれた当園では、これから散歩、虫捕りと、楽しいことがたくさん待っています。ビニール袋を片手に畦道を歩く、素速い子供はどんどん袋をいっぱいにする。捕れない友達にも捕ってやる。時には「先生にもやる」と、おこぼれがまわってきます。珍しいのがいると、持っていた袋をなげだして全員で追いかけます。捕えた時のあのかん声。袋の中の虫が全部逃げてしまっても平気です。皆で捕えた大ものがいます。園にもどり飼育の準備が始まり、本がだされ、また始まるワイワイガヤガヤ。翌日の飼育箱には、仲間が増えています。狭い所でかわいそうと、部屋の戸を閉めきって虫たちを放したことがありました。逃げないように、そして踏み殺したりしないように、皆が注意し、虫に集中しました。私も子供も床にはって、虫だけをみつめていました。何かに熱中し、感激する時、きっと私も子供も同じことを感じ、つぶやいているんだと、言葉や姿にださなくとも通い合うものが、ピッタリくるものが、確実に感じとれるようになりました。

来年の卒園まで、まだまだ遠い先のことですが、これだけは私の願いとして持っております。柔らかな淡い色彩の心を持っている子供のこの時に、全身で受け止めることができる感激を経験させてあげたいと。そして、ふれ合った人たちと温かな心通うまじわりを自然につかみとってほしいと願っています。今日もまた、ワイワイガヤガヤに参加し、一歩一歩肩を並べて歩いています。

(三春町立岩江幼稚園教諭)

 

ふれあいを大切にして

ふれあいを大切にして

 

 

 

 

 


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