教育福島0065号(1981年(S56)10月)-011page
かしい問題が多すぎて“できた!”という成功感・満足感を持つことは殆どないといってよい。だから数学の勉強それ自体に面白みが湧いてこないし、勉強をしょうという気にもなれない」
このことは、多くの中低位の生徒達の最も深刻かつ切実な気持であり、教える側にとっても放置できない重要な問題である。この点に何らかの対策を講じて解決してやることにより彼らに“やる気”を起こさせることができれば…、ということが、私にこの実践研究を手がけさせた動機である。
二 授業改善の仮説
1) 単元指導の最初の段階で、予め設定した到達目標により分類されている段階別問題一覧(プリント)を与え、
2) 授業の中では、自分の能力に応じた段階の問題を解くことに努力させ、
3) 小単元毎に形成的評価を実施して個人毎の陥没点の発見と、それに応じた補完的個別指導を実施すれば、
4) (結果) 個別に設定した目標に無理なく迫ることができ、そこからくる成功感と、工夫された評価によって、当然期待できる成績の向上とあいまって、積極的な学習意欲と学力の向上が期待できるものと思われる。
【具体的には】
1、三段階の到達目標の設定(表1)
1)基本到達目標(A段階)
すべての生徒が到達する必要のある最低到達基準(公式の直観的理解や公式の単純利用程度)
2)標準到達目標(B段階)
大多数の生徒の到達を期待する基準(教科書の問の大部分が理解できる程度)
3)発展目標(C段階)
余裕のある生徒に与えるより高度な基準(傍用問題集のAとBの一部程度)
2、段階別問題一覧表(表2)
三段階の到達目標を具体的に生徒に提示するため、単元で学習する問題を三段階に分け、それを一覧表として配布し、単元全体の内容の把握と個別に到達目標を設定する資料とさせる。
3、形成的評価の効果的利用
AB段階の問題から、類題を選んでテストを実施し、生徒が自己採点をして、自分の陥没点を知り、問題一覧表の番号で復習すべき箇所の指示をうける。
4、評価
単元評価として作成した考査問題は
・基本到達目標の問題を五五%程度
・標準到達目標の問題を三五%程度
・発展目標の問題を一〇%程度
の基準によった。これにより基本のA段階を選んだ生徒でも、一生懸命やれば、今までのように欠点をとることなく五〇%の成績は確保できるという自信と期待感を持たせるようにする。
5、単元指導の流れ(図参照)
表1 到達目標の設定(一部抜粋)
表2 段階別問題一覧(プリント配布、一部抜粋)