教育福島0065号(1981年(S56)10月)-025page

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と所属しようとする集団の性格にち密に規定されている面の両面を持つように見うけられるといった、精神薄弱児にはきわめて理解しがたいことがらの一つであろう。

就学前は、母親を中心にした家族との特定した人間関係がすべてであった。この関係は、基本的に信頼しあい許しあえるような関係で他者との間には成立しにくい。就学前の精神薄弱児が、家族以外と人間関係を深めるということはまれであろう。そのコミュニケーションの手段も、特殊化された家族間で通じるものしか身につけていない場合が多いと思われる。指導の効果をあげるためには先生と児童生徒の間に新たな関係づくりをはじめなければならない。

しかし、はじめから集団活動ができるような社会性のある児童生徒は少ない。まず、教師と児童生徒一人一人との一対一の縦の関係づくりに専念しなければならない。この教師と児童生徒との依存関係がきちんと確立することが大切である。この関係づくりをさておいていきなり集団活動を強制したり、他の集団との交流を強制するようなことがあるといろいろな指導上障害となる問題が多発し、時には改善困難になったりもする。できるだけ早い機会に、精神薄弱児にとって担任教師が学級や学校生活の中核的な存在となってほしいものである。

(二) 集団活動への参加を段階的に発展させる

社会性の伸長のためにはしだいに小集団から大集団へ、依存関係から友達の対等な関係での交流の機会も設定していかなければならない。ただこの過程も先を急ぐあまり慎重さを欠いたり無計画にならないようにしなければならない。見知った間柄での小集団活動を十分くりかえすことが大切である。この小集団活動の中で情緒的な成熟と集団生活の基礎的な内容のかなりの部分を習得させることができる。また、小集団なるがゆえに、社会性の伸長のためには、一人ひとりにきめこまかな配慮がしゃすいところもある。

やや大きな集団で自発的に行動するためには、単に社会的な技能が伸長しただけでは困難である。先生なり仲間集団なり、頼れる安定したよりどころがなければ、積極的に他に働きかけたり、新たな友人をつくったりといった行動は出にくくなろう。更に類似の集団活動をくりかえさせるように計画したい。だが学校ですすめられる集団活動もまた、特異である。上下関係や義理関係等通常の社会生活にある人間関係のかなりの部分が欠けていたりきわめて薄い。家庭生活、職場実習、校外学習の機会を十分計画的に活用する必要があろう。

このような点について生活単元学習の中で留意し指導を展開している例を次に紹介する。

 

生活単元学習による展開例

福島県立西郷養護学校教諭

大竹貞子

 

一 生活単元学習でめざすもの

 

(一) 活動への意欲を高め、活発な行動を促す

子供の興味、要求に応じた素材を取り上げ生き生きと活動させる。ごっこ遊びなども含み、遊んだ結果として、いろいろな知識、技能を獲得させ、態度、習慣を形成させる。

例えば、家庭や施設で夢中になってテレビを見、学校では普段小さな声でしか話さない子供が、大きな声で主題歌を歌っていることなどから、「怪獣ごっこ」を設定することになった。教師が扮した怪獣をやっつけるためみんなで相談して、基地や武器を作っていくという活動が活発になされた。この単元の他、「そばやさんごっこ」や「どうぶつごっこ」なども子供の興味や要求に即し、生き生きと展開された。

(二) 集団活動を促し、協力する態度を養う

それぞれの実態に合った活動を役割分担することにより、集団活動の喜びを味わわせる。

学習発表会で行った劇「宇宙戦艦ヤマト」では、怪獣、宇宙人、ヤマト隊員の三つのグループに分かれ、それぞれのグループの高学年の子は低学年の子の手を引き劇に参加させようと、一生懸命だった。

また、四つの動物のグループに分かれ、グループごとに協力して好物の食べ物(大型ぬいぐるみ)を運んでくる「好きな物はなあに」の単元では、単元が終わってからも、H君は同じグループだった他学級の友達に毎朝会いに行くなど、仲間意識が芽ばえた。

(三) 実際の社会生活に結びつく体験を広めるごっこ遊びにとどまらず、日常の生

 

駅のまちあい室で

駅のまちあい室で

 

 

 


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