教育福島0066号(1981年(S56)11月)-006page

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美しい日本語、正しい日本語を

 

歌人 山本友一

筆者紹介

 

筆者紹介

明治四十三年生。現代歌人協会理事。日本ペンクラブ会員。昭和三年旧制福島中学校卒業。昭和四年松村英一氏に師事し、雑誌「国民文学」を舞台に活躍、昭和二十一年には、新歌人集団を結成、その中心として短歌界の発展に寄与した。また、昭和二十八年に香川進氏と短歌結社「地中海」を創設し雑誌「地中海」を発刊、短歌界の重鎮として若手歌人の育成指導にあたり現在に至る。戦後、角川書店を経て、現在は九芸出版代表取締役。

昭和四十九年八月には、宮中歌会始詠進歌選者に任命さ

今年で満十五年、私は県文学賞短歌部門の審査に当たって来た。応募者は最も少ない年でも三十篇を超え、ここ数年は、ずっと五十篇を超える盛況である。十五年間におよそ六百篇に余る、単行の歌集やなま原稿を見て来たわけであるが、完全な表記にはただ二人の例外を除いては、お目にかかったことがない。今年はとりわけてひどく、私の手許に残した賞の最終候補の八篇にさえ、作品数二千六十一首中、二百十九か所の誤りがあった。実に十首に一か所以上の誤りが見られたことになる。漢字の誤用。新旧かなづかいの混用。送りがなの不備、不統一。連体形の誤記。完了の助動詞「つ」・過去(回想)の助動詞「し」の誤用。完了・存続の助動詞「り」の接続の誤り等々で、中、高校の教師、それも国語担当の先生がたも、その例外でなかったことはまことに残念でならない。

審査長としての立場から、最終の総合審査の席上で、如上の実態を報告に及んだところ、小説部門の岩間芳樹審査員から、テレビタレントの若い女優たちの話が出た。台本の理解力がまるでないのだという。卜書きの「呆然として立つ」には、棒のようにしゃちこばって立ち、「楚々として歩く」とあれば、そそっかしく足早に歩を運び、「喘ぎながら」にいたっては、性交

 

 

 


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