教育福島0066号(1981年(S56)11月)-032page

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わたしの研究実践

 

商業教科の基礎科目の指導

福島県立福島商業高等学校教諭

鈴木 瞳夫

 

一 はじめに

簿記会計1は商業科に入学した生徒は必ず履習しなければならない科目であり、商業教育の根幹をなす簿記会計科目群の基礎となる科目である。なおかっ高校に入って初めて学習する科目でもあるので、生徒にとっては未知の分野であり、期待と不安の入り混った緊張の中で学習が行われるのが通常である。更に教科書を開いてみると慣れない専門用語が次々と出てくるところがらも一般に理解の困難な科目といわれている。商業教育の基礎的内容を取り扱う簿記会計1をどのように指導すべきかは多くの教師の頭を悩ましている難問である。生徒の興味をひき、わかる授業を展開しようと工夫したことがらの概略を述べてみたい。

二 基本事項の反復指導

第一学期の簿記会計1の指導にあたり、帳簿決算までの簿記の基本の指導過程を構造化して、表1のように7つのグループに分けることとした。

グループ1)〜3)は全体から部分理解

グループ4)  は部分理解から全体構造の理解を目的としたものである。

それれぞのグループは、基本事項を中心としたいくつかのサイクルから構成されている。生徒はこれらのグループを1)から順に学習することにより、取引の仕訳、元帳への転記、決算、財務諸表の作成という簿記の基本を確実に理解することができる。

グループ1)については、表2に見るように、簿記の入門に際して大変効果的であるとされる「貸借対照表導入法」を取り入れた。その結果、生徒の理解増進について多大の効果を上げることができた。

グループ1)〜4)については、貸借対照表・損益計算書を各グループの末尾につけて、繰り返し教えた。基本事項を反復指導することにより複式簿記の構造の徹底理解を図ったわけである。

 

表1 簿記の基本事項についてのグループ別構造化

表1 簿記の基本事項についてのグループ別構造化

※ 各グループ終了時に豆テストの実施により確認を行う。

 

三 大切なキーワード

簿記は仕訳が基本である。仕訳とは商取引を記帳するにあたり1)勘定科目を決定すること2)金額を決定すること3)借方貸方を決定することの三つの決定をすることである。生徒の仕訳をみるとそのことがいずれも暖昧になされていることに気づく。取引例題の文章を十分読み取っていないことによる誤答が多いので、仕訳にあたっては注意深く文章を読むことから指導を始めることとした。勘定科目の決定のため文章のキーワードにアンダーラインを引かせるとか、キーワードを抜き書きさせる。これらをもとに丸と矢印を使って取引を図で表現させる。取引を図解することにより財産の増減変動をとらえていく。もちろん生徒は前のグループで財産に増減変動があった場合にはどの勘定に記入すべきかは学習済みなのである。取引からいきなり勘定科目や借方・貸方を決定させようとすると考え込んでしまう生徒でも丸と矢印で取引を表現させると、どうにか図解でき仕訳も間違えなくやってのけるようである。実際の商取引の経験がない生徒であることを考え、仕訳例題の配列は具体的な資産の交換取引から抽象的な債権債務の掛取引へと配列を工夫しなければならない。図解例を示せば、図1のようになる。

四 決算振替仕訳の指導

日常取引の記帳は比較的容易であるが、決算となると記帳手続が複雑となるので十分理解できる生徒が少なくなってしまう。決算振替仕訳は日常取引の仕訳と反対になるので、特に困難な学習項目となっている。決算振替仕訳の指導についてはいろいろ工夫されているが、私の場合はグラスのジュースを入れ替えるという身近な例で説明し

 

 

 


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