教育福島0067号(1981年(S56)12月)-043page
県指定重要有形民俗文化財
奥会津の麻織用具と麻製品 250点
所在地 南郷村大字界字川久保五七四番地の四旧山内家住宅内
所有者 南郷村
南郷村は福島県南会津郡に属する山村で、全戸数千百戸のうち、二百戸から三百戸が昭和二十年代まで、各戸で麻機を織り自家用に当てていた。そこへより便利な木綿が、自由に手に入るようになり、丈夫ではあるが欠点の多い、そのうえ手ひまのかかる麻を作る者が急に無くなった。
南郷村では早くからそのことに心を配り、村民の協力によって家々で近年まで使用していたものの寄贈をうけ、麻の栽培から採取、煮て糸をとることから地機で織りあげて製品にするまでの全工程にわたる用具の一式と、併せて麻製の日常使用の衣類および付属品とを収集することができた。一、二を除き、ことごとく同村のものであり、種類と数量は左の通りである。年号の記されてあるものは明治十七年十一月という地機一台だけで他にはなく、多くは明治以降のものと思われる。今は会津に絶滅した麻織関係の用具をほとんどもれなく集め、同地方のかつての麻を用いた生活の歴史を知る上で貴重な資料である。
※ 栽培用具 十八
製糸用具 六十二
機械用具 七十二
麻織原料 十五
麻製品 八十三
あとがき
○ 冬枯れの野辺に、つるべおとしの陽が沈むと、生気をおしつつむかのように静寂があたりを支配する。行く秋には黙りこんでいた自然の気配が、屈折した光の余韻の中でだだっ子のようにわめき散らす。十二月を迎えると、いつも思い出すのは、「ふる雪や明治は遠く……」であるが「秋霧のドアを閉ざして出る男(草田男)の句が、二重映しに焼きつくのはどうしたことか。
○ 師走。「宵越しの銭は持たぬ」などといって気風がよいのは、江戸ツ子と相場が決まっているが高なる鼓動だけは、大晦日の向こう側につなげたいものだ。
○ 明けて戌の年。「犬目」などと言われぬよう、豊かな心を飛躍の糧にしたい。
○ また、「犬も歩けば……」ではなく、自らの手で幸せをつかめるよう心がけたいと思う。(ひ)