教育福島0068号(1982年(S57)01月)-028page

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特集

重度・重複障害教育の推進

 

はじめに

 

昭和五十四年度から養護学校教育の義務制が施行された。これによって、心身障害を理由に就学義務の猶予、免除の対象となるのは、原則として、病状が重症で医療優先と診断された者に限られることになった。その結果、養護教育諸学校では、障害が重度であったり、重複したりしている児童生徒を受け入れることとなり、従来の学校のあり方とされた「学校に児童生徒を合わせる。」という発想から「児童生徒に学校を合わせる。」発想への転換を迫られることになった。訪問教育が制度的に養護学校教育の一形態として位置っけられたのもそうした動きに対応したものと理解される。

こうした折、福島県教育委員会としては、重度・重複障害教育方法の開発を重点施策の一つとして掲げ、未開拓のこの分野の教育方法の開発を推進するため、昭和五十五年度から「重度・重複障害教育研究指定校」の指定を行い、二年間の継続研究として二校ずつ委嘱することとした。

第一回指定として、県立富岡養護学校(精神薄弱)と県立平養護学校(肢体不自由)に研究を委嘱した。詳細は各校の報告書(一年次中間報告書、二年次研究報告書)にゆずることとしてここでは、さきごろ、研究発表会を実施した富岡養護学校の研究の一端を紹介する。

 

障害の状態に応じて 遊べる子どもを育てる 望ましい指導の手がかりを求めて

−重度・重複障害教育研究をふりかえって−

福島県立富岡養護学校

 

表題は、本校が福島県教育委員会より、昭和五十五・五十六年度にわたり重度・重複障害教育研究の指定を受けて設定した研究主題である。

いま、この二年間をふりかえってみると、不分明で未解明な「遊び」の指導で明け暮れしたといえる。

そのため、まだまだ研究実践の不足、不備による整合性に欠けるところが少なくない。むしろ、それが「遊び」の指導の難しさ、ひいては障害の重い子供の教育の難しさを裏書きしているのかもしれない。

無論、これからの研究実践のみちすじも安易なものではあるまいと思う。ただ、牛歩にも似た一つ一つの歩みが「教育に下限がない」あかしになればと願っている。

そして、これを機に、更に一層の研修と実践を積み重ね、今後に備えていきたいと思う。

 

一 研究主題設定の事由

 

本校は、隣接の精神薄弱児施設と提携し、そこに入所している学齢児が主に在籍している精神薄弱養護学校である。

全国的にみても精神薄弱児施設に入所している児童は、重度・重複化がすすんでいるが、本校提携施設は、その傾向が顕著であると判断してよい。このことは、とりもなおさず本校に在学している対象児童生徒の実態であるといってよい。

開校(昭和五十三年)以来、このような対象児に対する指導内容、方法について現職教育の研修課題としてとりあげて、試行錯誤し腐心してきたところである。

とにかく一日常生活における児童生徒の行動水準が低次にとどまっている場合が多いため、教科別の学習はもとより領域・教科を合わせた形態による生活単元学習、作業学習の適用も難しくなってきている。

このような実態及び状況を踏まえて学習活動を展開していくには、一人一人のニ−ドに応じた指導の発展としての「遊び」を、あるいは指導形態に応じた指導の手だてとしての「遊び」を、あるいは「遊び」そのものを指導の目標とした「遊び」の持つ教育的意義の重要性が痛感させられる。

そこで、それぞれの発達段階に応じて「遊べる子供」を育てることが、障害の重い児童生徒の発達促進の鍵になると考え、この研究主題を設定した。

 

二 研究の見通し

 

本校小学部、中学部の児童生徒を対象に「遊べる子供」を育てようとする

 

 

 


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