教育福島0068号(1982年(S57)01月)-029page

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とき、その指導対象区分を三つに分けることができる。すなわち(一)「遊び」の前段のレベルにあるもの(二)「遊び」そのものを学習課題とするレベルのもの(三)「遊び」に動機づけられて学習ができるレベルのものである。そこで、それぞれに共通する研究の基盤となる見通しを次のようにおさえてみた。

(一) 一人一人の学習経過とその現状に即応させた感覚訓練を実施して知覚能力の高次化を図りながら、粗大運動、模倣行動の発動を促すことになれば、その力は環境への能動的、積極的な工作活動の基礎となるだろう。「遊び」の素地もまたここにある。

(二) 「遊び学習」を一つの指導形態として教育課程に位置づけ、「遊び」を意図的、計画的に組識し、その「遊び」活動が能動的、積極的に発現・展開するなら、感覚・運動機能も高次・多様化し、より高次な「遊び」が「遊べる」ことになり、更に対象児の発達に大きく寄与することができる。

(三) 「遊び」がある学習の重要な動機づけの役割を果たすなら、課題意識を持ち学習目標にそった行動が可能な対象児の学習指導においても非常に有効である。すなわち「遊べる」ことが学習成立の前提条件となり、その学習目標達成の契機とすることができる。

紙数の都合により、研究計画、研究組識とその運営、また全体的な研究経過については割愛し研究・実践のメインとなる事例研究について紹介する。

 

三 研究の実践

 

事例1)(小学部特別学級の実践)

〈テーマ〉

学習の初期段階における遊びを高めるためには、個々の活動をどのように組識し、指導したらよいか。

(一) 事例の要約

T・K 男 昭和四十八年四月二十日生 小学部二年

本グループでは個々の児童のニードを見きわめそれにこたえる指導のあり方を模索してきた。本事例は多動で人や物へのかかわりの乏しい児童のコミユニヶーション活動の芽ともいえるものが見られるようになるまでのかかわりの経過である。

(二) 対象児の状況

てんかん、重度精神薄弱児、多動で一時もじっとしておらず、教室から逃げ出し町を俳御するなど目をはなせない状態であった。

○遠城寺式乳幼児分折的発達検査

DQ十六

○生育歴の概要

胎生期、出生期は特に異常はなく、乳児期、六か月日に風邪をひき、けいれんひきつけを起す。無熱性肺炎になり三歳ごろまで続く。幼児期、歩行は普通にあり、一歳半ごろ「ニヤーニャー」「ハイ」などの言語を発した。離乳開始は二歳、完了したのは四歳である。昭和五十五年四月本校に入学。

(三)指導の経過

入学当初、全く指導の方針もつかめない状態であったが、家庭での遊びの調査や行動観察を重ねることで本児の水に対する興味やものをたたいたり、足で踏んだりして音を聞いている行動が目にとまり、水遊び、楽器遊びへと本児の活動を向けることにした。特に水遊びでは、はじめは仲間から離れて遊んでいたが同じクラスの児童のそばでは遊べるようになってぎたし、担任の手を引いて要求する行動も見られるようになった。また、母親から「私のことが分かるようになったようだ」との報告があったのもそのころである。そして母親自身、寒い日は風呂で遊ばせ夏休みは近くの海で毎日のように遊ばせていたようである。また楽器遊びでは木琴や大だいこに興味を示した。

事例2)(中学部特別学級の実践)

〈テーマ〉

行動特性から見たM・Iの指導

(一) 事例の要約

M・I 男 昭和四十三年六月十五日生 中学部一年

本事例では、固執性の強い本児の行動を拡大するため、運動機能に焦点を当てた遊びの指導を展開したものである。

(二)対象児の状況

てんかん、身辺処理半介助、特に排せつ面では全介助、言語なし。

○遠城寺式乳幼児分折的発達検査

DQ十四

○生育歴の概要

生後四十日で四十度の発熱ありひき

 

小・特グループの水遊ぴ

小・特グループの水遊ぴ

 

中・特グループの室内遊び

中・特グループの室内遊び

 

 

 


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