教育福島0071号(1982年(S57)06月)-006page

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提言

 

美は真。深は新なり。

 

篆刻家 綿引 千齋

 

篆刻家 綿引 千齋

 

筆者紹介

篆刻家・書家。毎日書道展同人会員。毎日展準大賞、日展入選作家。日本書道美術院審査員、県書作家連盟理事・審査員、県総合美術展覧会招待・審査員等を歴任。いわき市在住。

今回、特にご無理をお願いして、篆刻「延年益寿」と書「自在天」を揮毫していただいた。本名、欣吾。

美ということは、一般には「美しい」ことで「醜」に対する「美」であるが芸術の目標とするのは必ずしも「醜」に対する「美」ではなく、それを究めることは造型意識を養うことで、ただうまくなればいいことではない、一歩を深めて真に物を知るということで、「美」と「真」は一致するものと思うのである。

書は蒙刻も含めて古来諸芸の裡でも小さな芸とされた。画や彫刻その他に比べ道具も時間も要らず、一管の筆、一本の鉄筆で了る。小枝といえば小枝だが、已に成年を過ぎた者が全魂を傾けてなお、自己の満足の域に達しない悩みを覚えるのは何故であろう。

芸の高きはその人の教養に比例するもので、常に自己を凝視し、心意気を高処に置く。殊に書、篆刻はその言葉を適切に反影する芸域で、詩、画、書を一部門の芸道とみて、これを深く研鎖するとなれば、勢い、この諸芸にも心を求めなければ、大成は望めないともいえる。その養う所が浅ければ、自ら意興の浅きを露わすこと疑いない。この最も簡単とされるものの裡に最も複雑さを蔵している為かもしれない。

 

芸術とは地味な仕事で、孤独と辛抱がつきまとう。

 

中国及び日本の書道は伝統が古い。幾多の名品の遺作が珍重され、世界的の鑑賞者の視聴を傾けさせてい

 

 

 


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