教育福島0071号(1982年(S57)06月)-030page
グループ研究・福島県立喜多方二業高等学校
「工業数理」の指導内容に関する具体的研究
−実態に応じたテキストの作成−
工業数理研究委員会
一 はじめに
昭和五十六年度福島県教育研究グループ奨励費補助団体に本校の工業数理研究委員会が指定を受け、表記のテーマを掲げて研究を続けて、ようやく一区切りの段階に到達した。ここにその概要を紹介する。
研究をはじめるにあたり、工業教理の指導について「道具としての数学そのものの習熟度が低く、また物象を工業事象として把握する能力が低い生徒が多い」「教科書の内容に素直に入りこめる生徒が少ないのではないか」「教科書だけでは授業ができそうにない」等の意見があった。
この壁を乗り越えるためには次のことが妥当であろうと考えられた。
(一) まず身近かな題材を取り上げ工業
事象として考えさせる。
(二) これらの事象を小・中学校で習得した数学を用いて処理させ、数理的処理の基本を身につけさせる。
(三) このため本校生徒の実態に応じたテキストを作る。
(四) テキストをひととおり学習させ工業事象を理解させながら更に教科書の内容に進む。
このように指導すれば、教理的処理能力も従来より確実に身につけさせ得るし、本校入学生の実態を考えた場合このような指導こそ必要であり効果的であるとの見通しを持ったのである。
二 工業数理研究委員会の構成
教務主任、工業科主任五名、工業各学科代表五名、数学科二名、理科一名、計十四名
三 研究方針
研究の流れとして、次のように定めた。
(一) 工業数理とは
(二) 生徒の実態は
(三) 好ましい題材と内容は
(四) 指導法と留意点は
(五) 評価法は
(六) 今後の課題は
四 工業数理研究委員会の研究経過
昭和五十六年四月に福島県教育研究グループ奨励費補助団体に指定されてから年度内に委員会、小委員会を各々九回開催して研究を進めた。主な経過を列記すると次のようになる。
・五月−「工業数理」の目標、内容の検討と研究方針の検討
・七月−数学科より本校生徒の数学の実態を説明
・九月−研究委員から提出された題材と内容を次の四テーマに分類、テキスト形式にまとめることと決定
1)長さ、面積、体積
2)電気と水
3)速さ
4)力
・十月以降、各班ごとに作業続行、十一月には委員二名による都内先進高校訪問を実施
・十二月−テキスト形式に研究資料原稿をまとめ内容整理に入る
・二月−産業教育現代化講習会において研究経過、内容を発表し、亀岡指導主事のご指導により内容を更に検討
・三月−研究報告書、テキストの印刷を依頼
五 研究内容
「工業数理」の目標
工業の分野における具体的な事象を数理的、実際的に処理する基礎的な能力を養う。
(一) 生徒の実態
中学時代までに培われた数学、理科、技術家庭の学力と実技能力等の実態をよく知った上で指導に当たれば相当の効果が上がるはずである。ここでは数学に対する実態のみをあげる。
・基本的内容において特に力不足を示している。
1)正負の数の概念と計算力について一部にかなりの混乱がみられる。
2)四則演算、特に分数計算に難点がある。
3)平方根の習熟度が低い。
4)文字式を解けない生徒が多い。
5)単位の異なる量の、単位を揃えての計算ができない者がいる。