教育福島0071号(1982年(S57)06月)-031page

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6)展開公式、因数分解公式等の定着度が低い。

7)図形に関する理解度が低い。

・具体的内容で問題があるところ

1)桁数の大きい数、負の数の減算の取扱いが困難である。

2)乗除の際の空位の0の扱いが困難であることが、顕著にみられる。

3)四則演算における乗除先行の原則を無視、計算しやすい所を先にやる傾向がみられる。

4)小数点の扱い、式の変形ができない者が多い。

5)分数計算では分数を見ただけで手をつけようとしない生徒がいる。

以上特筆すべき点のみをあげたが、中学校までの算数、数学が定着してない生徒が多い。

本校では一学年の数字について、クラスにより小集団学習形態の授業を実施、数学科と工業科の協力でかなりの効果を上げている。

 

(二) 好ましい題材と内容

 

1)好ましいと考えられた題材

 

前記のような実態を考慮し、本校生徒に適した好ましい題材と内容の素案を夏季休業中に作成することを申し合わせ、各委員ごとに工業全般から興味ある身近かな題材と内容が研究された。

 

2)題材の分類

 

夏季休業後、各委員から集められた題材と内容をどのように配列しまとめるかを検討し、次の四グループに分類した。

イ)長さ、面積、体積等に関するもの

ロ)水、電気に関するもの

ハ)速度に関するもの

ニ)力に関するもの

 

3)テキスト作成の留意点

 

委員を四グループに分け、テキスト形式にまとめる研究を続けたが、その際次の点に留意した。

イ)各事象の理解を深める内容

ロ)流れをもった身近かな内容

ハ)生徒の作業を多く取り入れる

ニ)できるだけ易しく、生徒が成功感を得られるようにする

ホ)道具としての数学は中学までを中心とし、三角関係までとする

ヘ)学習指導要領の内容(1)〜(4)の範囲とする

ト)必要があれば似たような内容が再掲されてもよい

 

(三) テキストの構成と学習指導計画

 

以上の研究によりテキストの原稿が出来たのであるが、中学で学んだ関数を実際の事象と関連づけて導入とするため序章をを続けた。

また、テキストによる学習指導計画は別表1の通りである。

 

別表1 学習指導計画

序章 簡単な工業事象と数式

工業事象と数式 (2)

 

第一章 長さ、面積、体積等の計算

(一)長さを求める (3)
(二)面積を求める (3)
(三)体積を求める (3)

第二章 電気と水

(一)流れと蓄積 (1)
(二)乾電池とバッテリー(2)
(三)直流と交流 (1)
(四)電流と電力 (1)
(五)電力量
(六)電気料金の水道料金 (1)

第三章 速度

(一)速さと単位 (1)
(二)等速運動 (2)
(三)等加速度運動 (3)
(四)等速円運動 (1)
(五)音の速さと振動数 (2)

第四章 自動車の力と伝達

(一)内燃機関のしくみ (3)
(二)回転力の伝達 (4)
(三)自動車の燃費 (1)
(数字は時間数)

六 今後の研究について

 

以上、研究方針に沿って研究を進めてきたが、研究期間が一か年の短期間であったため極めて未熟な成果しか挙げ得なかったと思われる。現在テキストによる授業が開始されているが、今後授業をどのように進めるかという授業研究を推進するため、今年度も工業数理研究委員が改めて任命された。

今後の研究項目として次のことがあげられている。

1)テキスト内容の検討

(形態、題材内容の加除等)

2)補助教材、視聴覚器具等の使用法の研究(OHP等)

3)評価法

4)他校視察

 

七 おわりに

 

新科目の「工業数理」を学習することにより、工業事象の理解と数理的処理能力が養われ、更に専門科目への興味と関心が培われるものと思われる。

われわれ教師は、生徒の基礎能力とその発達に応じた教材を使用し、生徒とともに学習していく態度が必要となるのではあるまいか。

 

なお、テキストの残部が若干あり、お分けできますので、ご希望の方は本校工業数理研究委員会までお申し込み下さい。

(代表 坂本一郎)

 

 

 


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