教育福島0072号(1982年(S57)07月)-013page

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より実際に中学校訪問を実施している当地区の現況では、いま緊急に必要なものではないと考えた。中学校の負担量が多くなるし、「何と言っても、カード以前に中高の信頼関係を確立することが先決である」などの意見がでて将来への検討課題として残された。

 

五 船引町学校教育協会を通しての連携

 

船引町内の五中学校と一高校との中高研究協議会は、家庭的ともいえる状況の中で、核心に触れた話し合いがもたれ、相互理解や対応も円滑に行われている。中学校の先生方の生徒の家庭環境や、地域の特性についての把握は的確であり、高校側としても教えられるところが実に多かった。

授業の公開は、中、高校で交互に行われたが、公開後の授業研究会では、教科内容や指導方法について、話し合いが行われ相互の理解が深められた。

中高合同の各教科研究会を定例化する事と、多くの先生方が参加できるような方策などが、今後の検討すべき課題であった。

また、レクリェーション(スポーツなど)や教育懇談会をもち、本音が出しあえるインフォーマルな面にまで連携は深まっている。

 

六 県南地区高等学校生活指導協議会田村支部会を通しての連携

 

支部内の学校数が少ない(三校、一分校)ために卒直な情報、意見の交換、事例研究などが行われ、地域性がからむ類似した問題行動に対しては、まさに組織の機能を十分発揮できた。

中学校からの生徒指導や進路指導に関する要望については、田村支部として受け、三校が一致した対応ができるよう検討や協議を重ねた。

また、問題行動をもつ生徒の交友関係が判明し、それが中学生と関連していたり、中学生を巻き込んでいたこともわかり、急きょ関係の中学校と連絡をとって指導できた事例もあった。

 

七 日常的な連携

 

生徒指導における中高の連携で見逃ぜないのは、定例的に行われる種々の協議会や研究会の席上での事よりも、随時の学校訪問やふだんの何気ない触れ合いが大切である。改まった雰囲気よりも日常の連携に心掛けたため、生徒の問題を未然に防止できた事件もあった。

 

八 成果とこれからの課題

 

研究方針に「抽象的一般論でなく、個々別々な問題の具体的な対処の方法を探る」ことを掲げ、実践を通してあるべき姿を求めたが、今まで述べた以外に、数多くの有形、無形の成果も得られた。実践、実態の評価(アンケート)では、次のようなことがあげられている。

(一) 中学校側から

・卒業生の動向が把握できた。

・きめの細かい、厳しい指導であることを知り、中学生に対して目標をもたせて、それぞれの高校に安心して進学するよう指導したい。

・中学校としてどうすべきかに対し、入学前の指導の手がかりを得られ大いに役立った。

また、中学校の努力点を理解してもらう機会でもあり高校の考えを知りうるよい機会である。

・生徒会新聞、卒業後の進路状況など役立った。高校入学後の目標をもたせる進路指導を行うようになったのは大きな前進である。

・高校生の生き生きしたクラブ、部活動の状況等中学生に紹介することができ、受験生への励みにもなった。

(二) 高等学校側から

・基礎学力というより基礎的知識の低下が目立つ、もっと教科面の連携を常時もちたい。

・生徒、家庭環境、地域の状況などについての資料が豊富になり、判断や指導に的確さや客観性が加わった。

・問題行動をもつ生徒の資料が、ほぼ入手でき、早くから個人指導ができた。

・中学校の先生方の指導の観点が理解できた。

などである。また、中高の連携は深まりを見せているかの設問に対し、昭和五六年度は連携が深められてきているという答が半数近くなっている。

これは中高連携の必要性の認識や組織などの性格が明確になって来たことと、中高連携の組織や中高相互の学校訪問の実益が具体的に見えて来たことにもよると考えられる。

なお、三〇名が中高連携の実益について不明だと答えているが、連携に消極的である人や、関心はもつものの直接連携の機会を持たない人たちとも考えられる。

多くの人が中高一貫教育の必要性を認識し、問題意識をもって意欲的に取り組むためには、学校や地域全体の機運が高められなければならない。そのためには地域ぐるみの健全育成活動に加わり、地域内のすべての学校が、生徒指導上の基本的なところで同一歩調で進むことなども大切である。このような中での着実な実践の積み重ねこそ地域に根ざした本当の生徒指導となり得るであろう。

以上、二年にわたる研究の成果や今後の課題をのべたが、研究の過程の中で終始中学校側のご協力やご支援を頂いたことを感謝する。

 

○石川高校

 

一 基礎調査

 

研究を進めるに当たっての実態把握や、問題点を探る意味でアンケート調査を行い研究のスタートとした。調査は、関係中学校教員、本校生徒、保護者を対象とした。

 

 

 


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