教育福島0075号(1982年(S57)10月)-018page

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農業

 

わかりやすい実験を取り入れた授業の研究

 

福島県立岩瀬農業高等学校

教諭 石川恪治

 

最近の農業高校に入学してくる生徒の実態は、非常に多様化している。この現状に対し、今回の指導要領の改訂によって、「農業基礎」の新設や、専門科目が大幅に統合、改善され、従来の学習内容の量的拡大や、質的な専門化、高度化への反省がなされた。

めまぐるしく変化する、農業をはじめとするいろいろな社会情勢に対し、将来生徒達が柔軟に、しかも弾力的に対応できる能力の養成が重要課題とされている。それには、基礎的、基本的知識、技術をいかに体系づけて、わかりやすく、正確に、しかも、興味、関心を喚起させながら習得させるかということが出発点であると思う。生徒の興味、関心を学習のどこかで、一つでも芽ばえさせることができれば、それを拡大、発展させる手立ては、農業高校にはいくらでもある。その過程の中で、生徒の正しい職業観、職業人としての資質、社会人としての人格形成の基盤が、おのずから涵養できよう。言うことはやすく、行うことはむずかしいが、ともかくも生徒の興味、関心を少しでも喚起できればと思い、第二学年の食品化学で授業の改善を試みた。

 

一 生徒の実態

 

授業をしていて強く感じることは、次のようなことがらである。

(一) マスコミの発達した社会で成長したためか、視聴覚に訴えると敏感に反応する反面、単調な座学にはあきてしまう。

(二) どうぜやっても自分には理解できないとのあきらめが、先行してしまう生徒が多い。

(三) 授業は静かにして、ノートをとることのみが学習と思っている生徒が多い。

(四) 自分で考え、自分でやってみて、理解できた、やったという成功感、成就感を体験したことが少ない。

(五) 化学ときくと、抵抗を感ずる生徒が多い。

(六)実験には比較的興味を示すが、真剣味が足りない。

以上のような生徒の実態を踏まえて改善に取り組むことにした。

 

二 改善に当たって

 

(一) 仮説の設定

学習の目標を明確にし、身近な教材で、わかりやすい実験を増やし、理解を深めることができれば授業への興味、関心を喚起できるのではなかろうか。

(二)実践のための計画

1) 学習内容を基礎的、基本的事項に精選し、体系づける。

2) 学習内容が、実際の食品加工の上で、どう生かされるのか、また学習していることを土台に、どんなことがわかるのかを明確にし、年間指導計画の中に盛り込む。

3) 実験はできるだけ身近な教材を使い、食品への関心を高める。

4) 実験は、家庭での実験と学校での班別実験との二本立てとし、一人一人が実際にやってみる機会を多くする。また、これらが重複しないようにしながら、授業との相乗効果を高めるようにする。

5) 実験カードにより、実験の目的把握、方法の理解、結果のまとめ、自己評価が円滑に行なえるようにする。

6) 単元ごとに座学での指導項目、家庭での実験、学校での班別実験項目を構造化するとともに、他の専門科目との有機的な関連を図る。

(三)授業の展開

1) 座学について

本時に学習する内容をしっかり把握させる。内容はできるだけ精選し説明は簡潔にする。また食品加工との関連、応用面の説明を加える。学習内容のうち実験で検証できるものについて、用意した実験カードを使って説明する。本時以前の実験で結果がでている場合には、数名のものに結果の発表をさせる。指名にあたっては、均等になるよう留意する。フィードバックさせ結果のまとめと考察をする。

2) 家庭での実験について

一人一人、自分でやってみることを主眼にする。学習内容に適合し、どの家庭にもある食品や器具を利用してできる実験を考える。必ず実験カードの提出を義務づける。

3) 学校での班別実験について

実験台の都合上、六班に編成する。前の授業で説明した実験カードに従い実施する。個々に結果の記録をすると同時に実験はできるだけ班単位で、温度や時間、試薬の添加量や濃度などの条件を変えて実施させる。終了後、班ごとに代表が結果を報告、他の班のものは、そのデータを記録し、実験全体を考察する。

4) 実験カード

実験ごとに用意する。実験終了後「結果のまとめ」 「自己評価」した上で、必ず提出させる。生徒の理解度をチェックし、講評を加えて次の授業で返却する。 (表1・部分)

 

三 授業の実践

 

以上のことを念頭に実践を試みているが、食品成分のアミノ酸とたんぱく質に関する授業実践例をあげてみる。

座学での講義内容を精選し、それと実験を効果的に関連づけて実施した。

(一) 家庭で実施させた実験

1) グルタミン酸ナトリウムの味覚テ

 

 

 


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