教育福島0075号(1982年(S57)10月)-019page
スト
2)グルタミン酸ナトリウムと糖液の加熱実験
3)牛乳の加熱によるラクトアルブミン ラクトグロブリンの分離、観察
4)小麦たんぱく質のグルテン形成
5)小麦粉焙煎によるグルテン形成の変化について
6)焼いたグルテンの性質
(二) 学校で班別に実施させた実験
1)ニンヒドリン反応とペーパークロマトグラフィーによるアミノ酸の分離と判定
2)脱脂乳のレモン果汁による凝固
3)硫酸カルシウムによる豆乳の凝固
4)亜硝酸ナトリウムによるヘモグロビン、ミオグロビンの安定化と発色
このうち、アミノ酸については、座学で「構造」、「種類」に続き、特に重要な性質として次の三つをあげた。
○うま味を有すること
○ニンヒドリノ反応を呈すること
○アミノカルボニル反応(メイラード反応)を呈すること
うま味については、グルタミノ酸ナトリウムがモノナトリウム塩であることを指導した上で、三、(一)1)を実施し、次の授業で確認し、日本人の発見によること、特許のこと、どんな食品に使われているかなど、発展的にとらえさせた。更に、チーズ、納豆、みそ、しょう油等、「うま味のある食品」について理解を深めるため、アミノ酸の分離と判定の方法について、三、(二)1)の実験を実施した。班ごとに三ないし四種類のアミノ酸を混合し、それを再び分離、判定した。移動率の測定による判定には大分興味を示したようであった。更にこの実験を行なうことによって、食品中のうま味の調査もできること、反応がでればアミノ酸であり、どんなアミノ酸であるかも判定できることを明確にした。実習や専攻学習では製造するみそやチーズにおいて、いっ頃からうま味がでてくるのか、どんなアミノ酸が出てくるのか、どんな条件で、より多くのアミノ酸が出てくるかなど、この方法を使ってプロジェクト学習にどんどん発展できることを強く示唆した。
次いで、三、(一)2)の実験を実施させた。実験カードの回収は一〇〇%であった。この反応は、砂糖では一番遅いわけであるが、どの家庭にもあるので実施させた。講評を加えて次の授業で返却し、結果を発表させた。実際にはみそやしょう油の色がこの反応で生成されること、また三年生が製造する酸乳飲料で、加熱しすぎるとこの反応がおきて、うすく着色するのもこのためであることを指導した。今年の製品も全く同じ方法で製造したにもかかわらず、一、二回目よりも三回目の方が色が濃くなったのは、殺菌温度が高く、しかも時間が長くなってしまい、この反応がすすんだためであることを説明した。
以上のようにして、座学と実験の関連を密にし、更に実際の利用、応用へと発展させた。
表1 実験カードの例(家庭での実験例)
四 実施の結果から
(一) 家庭での実験には、予想以上に積極的に取り組むことがわかった。三、(一)2)の実験の感想をあげてみると、
○火加減などむつかしかったけれど実際に自分でやってみておもしろかった。
○色の変化がおもしろい。楽しんでできた。
○なべをこがして母におこられた。
○自分としては一生懸命やった。これからもこのくらいの実験だったらやりたいと思う。
○目を離さずやった。結果はともかく良くできたと思う。
(二) 学校での班別実験も活気が見られ班内の協力が目立つようになった。実験カードヘの結果のまとめも習慣化された。何のために、どのようにしてやるのかがわかっていると、生徒は良く実験をやることがわかった。
(三) 座学での生徒の態度が良くなってきた。以前に比較し、実験の結果の発表や考察、次の実験の予習等変化が出たためと、多少なりとも授業がわかる生徒が増えたためであろう。 −
(四) 身近な食品を教材にして実験したため、生徒の食品に対する見方が科学的になった。
(五) 実験を通して理解できた基礎的、基本的事項を総合実習の中で生かすこ